LAB
平原 真Makoto Hirahara
02「シコウの記録(1)」
こんにちは。アートサイエンス学科の平原です。
この連載では、何回かに分けて最新作「GeoLog」の制作過程や展示の様子をご紹介していきたいと思います。
GeoLogとは
木が育った土地の地形を、その木自身に彫り込んだ彫刻作品です。
木を造形の素材としてのみ扱うのではなく、生き物としての個体性に注目しています。
風雨や日照など周辺環境の影響を受けて出来た樹木の「年輪」と、 大地の隆起や侵食によって形成された「地形」という、 異なるチカラとウゴキの結果を、一つのカタチに定着させています。
今回は、これまで作ってきた作品を紹介しつつ、どのような経緯でこのような作品に至ったのかをご紹介します。

インターフェースファニチャー
2000年中頃、MONGOOSE STUDIOというチームで、工業製品のコンセプトモデルというフォーマットに乗せてアイデアを発表していました。生活の中で使う事を想定し、効率や利便性ではなく精神的に豊かな暮らしを提案しています。

物の色を読み取りその色で光るライトです。現実の物から色を取り込む事で感情移入が生まれ、その色を見ただけで記憶や情動が呼び起こされます。
ブラインドの羽一枚ずつに面光源が取り付けられていて、窓があるかのように見える照明器具です。
自然の抽象化
2000年後半から、複雑系やフラクタルといったキーワードからインスピレーションを得て、オブジェクト同士の間に働く見えない力や関係性をテーマとした作品を展開しました。

小石の型を取り、磁石を入れてセメントで複製しています。不思議な形に積む事ができます。

歪みセンサーとLEDが内蔵されたベンチです。腰かけた時の力の加わり方を可視化します。

植物の生存競争や遺伝、突然変異などをモチーフとした、仮想の生態系を作り出すアンビエントアートです。

磁石が入ったY字型のピースを繋いで、植物や動物に見立てたり、幾何学的な形を作る事ができます。植物のモジュール構造と磁石による結合を組み合わせた作品です。
木の肖像
前述のYedaを作るために、ナラやブナ、ウォルナットなど様々な樹種を試し、それぞれ硬さ、重さ、年輪の入り方などに大きな違いがある事を実感しました。さらに突き詰めて考えると、木は生き物でありどこかの土地に生えていた、という事に思いたりました。素材としてではなく、その木の個性を引き出すために地形を彫刻したのが「GeoLog」です。
奈良県吉野川上村
現在制作中の作品は、古くから酒樽の材料として使われてきた吉野杉の産地、奈良県吉野郡川上村の樹齢200年程の木を使用します。
次回は、川上村で樽丸(酒樽の材料の木)作りの職人から、材料となる丸太の輪切りを分けていただいた事をご紹介します。

WRITER
- 平原 真/ひらはら まこと
- 1979年新潟県生まれ。インタラクションデザイナー、造形作家。長岡造形大学卒業。人とモノのインタラクションをテーマに、体験型コンテンツ、アプリ、プロダクト、玩具まで幅広い作品を手がける。アーティストユニット「C-DEPOT」「MONGOOSE STUDIO」「PRTOTYPE Inc.」を経て、2014年独立。第6回文化庁メディア芸術祭インタラクティブアート部門審査員推薦作品選出など受賞歴多数。