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2021.03.04

屋久島の一瞬の自然・空間・音が、時空を超えて共振する。コムアイとオオルタイチのYAKUSHIMA TREASUREがひらく新たなオンラインライブ

TEXT BY NANAMI SUDO

コムアイとオオルタイチによる、屋久島の自然を舞台とした音楽プロジェクトYAKUSHIMA TREASURE。今回「ANOTHER LIVE」と称し、ガジュマルの原生林の中で収録されたパフォーマンスをオンライライブ形式で配信。クリエイティブスタジオDentsu Craft Tokyoと映像監督・辻川幸一郎がタッグを組み、360°の3D点群データとしてスキャンされた自由自在な視点からの視聴体験が実現している。今回、SUPER DOMMUNEで配信された濃密な公開トークをレポートする。

出演(Part1):(左から)宇川直宏、コムアイ、オオルタイチ、辻川幸一郎、菅野薫
YAKUSHIMA TREASUREとはなにか?

まずはYAKUSHIMA TREASURE結成のきっかけや、楽曲製作のインスピレーションとなった屋久島(鹿児島県)や久高島(沖縄県)でのフィールドワークについて語られた。

宇川直宏(以下、宇川): 新型コロナウイルス流行の影響で、実空間でライブをやることがなかなか難しいいま、多くのアーティストたちが模索を続けています。その中でも、今回の「YAKUSHIMA TREASURE」は全く新しいプロジェクトだと感じてて。

菅野薫(以下、菅野): 今回の「ANOTHER LIVE」は、コムアイさんとオオルタイチさんのプロジェクト・YAKUSHIMA TREASUREと、僕の所属するDentsu Craft Tokyoのテクニカルチーム、そして映像監督の辻川幸一朗さんとのコラボレーション作品です。実際に屋久島のガジュマルの森で行った一度限りのライブパフォーマンスを、ウェブブラウザを通して、どなたでもインタラクティブに体験することができます。

菅野薫

配信は2月11日〜3月31日まで、特設サイトにて配信。まるで屋久島のライブ会場に行って、YAKUSHIMA TREASUREの2人と一緒の空間でパフォーマンスを観ているかのような体験が可能になる。

コムアイ:以前、YouTube Originalsの「Re:SET」という企画で、何かとコラボレーションをして曲と映像を作るというお題が出たのですが、その際に映像をお願いした監督の鎌谷聡次郎さんが「コラボレーションの相手を山や島などの大きな自然にするのはどうだろう?」と提案してくださり、屋久島とのコラボレーションが決まりました。

音楽は、以前から水曜日のカンパネラの楽曲の「ユタ」や「愛しいものたちへ」などを手掛けていただいているオオルタイチさんのプロデュースです。その企画でPV化した楽曲は1曲だけだったのですが、他にもどんどんアイデアが溢れてきてEPを作ることになって。そのタイトルこそが『YAKUSHIMA TREASURE』だったんです。これがはじまりですね。

コムアイ
沖縄・久高島の死生観から受けたインスピレーション

コムアイ: 大石さんにはLIQUIDROOMのライブレポートを書いていただいているんですよね。

大石始(以下、大石): YAKUSHIMA TREASUREがこれから向かおうとしているもの、その圧倒的な存在感を示したのがLIQUIDROOMでのライブで、僕も拝見しました。会場に入ってとても驚いたのは、ステージが真ん中にあって、それを観客が囲むというステージ構成です。

僕は普段、音楽以外に、日本の祭りについて取材しているのですが、ライブを観て宮崎県の高千穂の夜神楽を思い出しましたね。というのも、主に神楽というのは神様に踊りを奉納する儀式で、観客はそれを横から観ているという位置関係になるわけですよね。

YAKUSHIMA TREASUREのライブとの共通点はそこにあって、観客に向かって演奏しているというよりも、観客ではない何か”に対して奉納されている演奏を、周りの僕らが観ているように感じたんです。

遠隔で参加した大石始

コムアイ: 私はそれしか表現する方法を知らないのかもしれない(笑)。別の何かに対して、パフォーマンスを通していかにはたらきかけるかという試行錯誤のなか、それを公演として成立させるためにオーディエンスともコミュニケーションを取るにはどうすれば良いのかということがもうひとつの課題としてあります。

オオルタイチ(以下、タイチ): 僕もどちらかというとその”何か”と対話する方向性を意識していますね。今回コロナ禍で何ができるのかを考えた時に、普通に生きていては体験できないようなことをやりたいと思い、「死からの再生」というテーマがすぐに決まりました。

オオルタイチ

菅野: まさに今回ライブパフォーマンスした楽曲である「殯船(もがりぶね)」と「東」の2曲ですよね。元々EP「YAKUSHIMA TREASURE」の3曲目と4曲目に入っていた楽曲が主題になっています。

コムアイ: この2曲は、屋久島のプロジェクトではありますが、比嘉康雄さんの著書『日本人の魂の原郷』で言及されている久高島の琉球神道からのインスピレーションを強く受けています。

久高島では太陽が昇る東側を神様や先祖が暮らしている理想郷「ニライカナイ」と認識していて、死者を見送る時に、東側に向かって「私たちの仲間の一人が亡くなって、これから魂がそちらに行きますよ」と挨拶をするという風習があります。反対に、西側には死のイメージが持たれているのですが、実際に風葬するのは西にある崖からなんです。そこから、死者の魂は「太陽の穴」と呼ばれるトンネルを通って東の「ニライカナイ」に到達するという言い伝えです。島育ちの私にとって、このような久高島の死生観はとてもしっくりくるものでした。

© YAKUSHIMA TREASURE

菅野: タイチさんはこのコンセプトをどのように楽曲に展開したんですか?

タイチ:「殯船(もがりぶね)」は、僕が曲名を付けました。屋久島にある翁岳という山には、山のてっぺんから船を送り出すという言い伝えがあって、天皇家が亡くなった際に棺に入ることを「船入り」というそうです。他にも、民話の中には海の彼方にものすごい数の船の亡霊を見るという話や、お墓に船旗を立てる風習から、死と船のイメージにはすごく重なるところがあって

菅野: 配信映像の方でも船は大きなモチーフになっていますよね。

宇川: アニミズム思想もYAKUSHIMA TREASUREにはかなり重要なコンセプトなのではないでしょうか。

大石: 屋久島は法華宗の影響が非常に強い島ですが、根底には山岳信仰があります。どこの集落にいても山が見えて、漁師さん達も方角の目印を山にしていたりするわけです。島の人たちの精神性の根っこにある「入ったら戻って来られない」というような山に対する恐れが島の歌や芸能に大きな影響を与えていると思います。

また屋久島は何が面白いかというと、琉球文化圏とヤマト文化圏のちょうど境界線上の場所であり、生物や植物も種類が分かれる場所でもあるところです。ガジュマルをはじめ、屋久島を北限もしくは南限とする植物がたくさんあるんです。

© YAKUSHIMA TREASURE

コムアイ: 集落同士の付き合いがあまりなかったという話も聞きました。山が深いとどうしても地域を超えたつながりが形成されにくいのでしょうか。

大石: 久高島と屋久島は距離としては結構離れているので、直接的なつながりはそれほどないと僕も思っていました。しかし調べてみると、昔は久高島の魚人がニライカナイの贈り物とされる「イラブー」というウミヘビを追いかけて屋久島まで来ていたなど、実は物々交換で貿易が行われていたらしいんです。

そういう意味で考えると、YAKUSHIMA TREASUREが久高島もヒントにして楽曲を作っているのは決して強引なことではないと思いました。

弥生時代の楽器を復元、精霊と心を通わせる「UFO琴」

次に、映像監督の辻川幸一郎氏と「UFO琴」というオリジナル楽器を製作した仏師の浅村朋伸氏を迎えて、パフォーマンスの演出にまつわる話が進んだ。

辻川幸一郎

辻川幸一郎(以下、辻川): 優秀なテクニカルチームと一緒に、普段自分が使わないような機械や技術に触れられたので、驚き楽しみながらやらせていただきました。出来る限りミニマルにつくることを意識して、ディレクターとして道筋を定めていきました。

菅野: まずコンセプトの引き受け方としてステージの船に触れたいのですが、屋久島のガジュマルの森の真ん中に作った船が今回の大きな象徴になっていますよね。

辻川: アンディー・ゴールズワージーというイギリスのランドアートの巨匠のように、その場にあるものだけで死者を送り出すような祭壇を作るという構想が最初にわいてきました。そこに美術演出の上野雄次さんが加わり、船のモチーフにまとまりました。

© YAKUSHIMA TREASURE

宇川: 途中経過を見させていただいていましたが、生々しい精霊が漂っているような自然の中で、シンボリックなこのステージが出来上がったことで、もうこの作品の8割は成功していると確信しました。たくさん盛り込まれている新しいテクノロジーの特性を精霊との交信という原初的なイメージにうまく変換できていると思います。

2人のアーティストが点群で表現されているところにも、彼らが肉体を持っているのか、はたまた輪郭だけなのか、通過できるのか、もしくはぶちあたるのか…。そんな重力をも超えたイメージが実現していて、身体を離れた後の浄化された魂同士の交流のようなものがこの船という舞台で行われているように感じました。

菅野: ステージの真ん中にはUFO琴という新しい楽器もあります。

UFO琴づくりの過程

タイチ: 昨年、熊野に訪れてフィールドワークを行った時、仏師の浅村朋伸さんに案内していただいたのですが、色々と巡るうちに日本古来の楽器が弥生時代の遺跡から出土しているのを知って、YAKUSHIMA TREASUREで使う楽器として復元したら面白いんじゃないかというところから琴づくりが始まり、このUFO琴が誕生しました。

浅村朋伸(以下、浅村): 僕は普段、仏像を彫ったり修理したりする仕事をしています。元々音楽については全くわからないのですが、遺跡から琴が出土していると知って、弥生時代の人々の技術に大きな衝撃を受けました。音がより響くように、弦の素材を絹から鉄にしてみたり、鳥取県の青谷上寺地遺跡から出土された琴を参考に内側を削ってみたりと細工を施しました。

浅村朋伸

コムアイ: 琴は精霊との交信にも使われるように、不思議な魔力を持っている楽器だと思います。空間にも弦を張るというか、漂っているものと自分の思いとが一緒に振動できるような不思議な楽器ですね。

辻川: UFO琴は映像で見ていても、ループしているところが印象的です。琴というよりもハープっぽい弾き方で、それがずっとループするっていう構造に僕はグッと来ていて、ビジュアル的にも最高な感じでしたね。

浅村: 試作の段階でタイチさんに一度電話で音を聴いてもらった時に、「和音がいいですね」と言っていただいて。鳴らす時、行き来する動作ではなくぐるぐる回したらひとつの和音を永遠に鳴らせるんじゃないかと思って。そこから、真ん中がドーナツ状になっているUFO琴の構造に行き着きました。

屋久島での収録風景

タイチ: 音の収録については、船のステージを中心に6個のスピーカーを囲むように配置していただいていました。森の中の風の音や鳥の声などの環境音に対して楽器や声をミックスする形で音作りされています。6.2chサラウンド環境で鳴らして撮ったものを、最終的には8chのサラウンドに変換してミックスしています。

菅野: 一度その空間と混ぜて一体化させてから、それをさらに獲得しにいくという構造になっているわけですよね。

コムアイ: ちなみに衣装はスタイリストの渡辺慎也さんが手掛けてくれています。

辻川: これは屋久島の土を使った泥染めの生地なんですよね。

渡辺慎也(以下、渡辺): YAKUSHIMA TREASUREのテーマのベースにある輪廻転生から紐や綱をつながりのニュアンスの表現として使いたいと思いました。即興性がこの作品には大事かなと思ったので、東京ではあまり決めこまず、屋久島の泥染め職人に材料を送って、衣装の最終的なブラッシュアップは現地で仕上げました。また、素材は昔からなじみのある綿や麻、和紙などを使用しようと個人的にルールを決めています。

渡辺慎也

辻川: チームのみんなが円環や螺旋など、「自然の輪」というような共通のテーマをいつのまにか持っていますね。

菅野: 楽曲のコンセプトから相互に影響を受け、みんなの着想が絶妙に同じところに辿り着いていると思いました。

全編スキャン撮影による超360°空間の実現

最後は、Dentsu Craft Tokyoのメンバーが、空間や音響を一度取得してから再構築するという撮影手法について解説。辻川監督が目指したシンプルな表現が、いかに試行錯誤されて完成されたのかが垣間見られた。

(左から)堀宏行、村田洋敏、西村保彦、西村保彦、菅野薫

西村保彦(以下、西村): 当初はVRでやる案が出ていましたが、普通に360°のカメラで撮っても新しいライブ体験にはならないと思い、まず考えられる機材やテクノロジーを使って何ができるのかを検証しました。

菅野: 色々な撮り方や再生の仕方、編集での組み合わせ方を試しながら、いかに手法を絞るかということを監督と協議し続けました。どうコンセプトと合わせるかを考えて、最終的に光学式の撮り方は止め、全部スキャンで撮ろうということになりました。

9個のキネクトで撮ったデータを再構築する様子

辻川: スキャンってすごいですよね。普通のカメラは一方向から捉えるものだし、360°カメラにしても1枚の画を360°貼るだけですが、スキャンならその裏側まであるじゃないですか。撮ったものを後で裏から見られたり、時間軸をいじれたりなど、どの角度からも見られるカメラは、描写の解像度こそ違えど原理的には本当に新しい目だと思いました

堀宏行(以下、堀): Kinectには映像的な時間軸があるけれど、フォトグラメトリーやLiDAR(ライダー)スキャンの場合は、それぞれ違う一瞬の静止が作品の中に存在しています。

※Kinect…色情報だけでなく深度も取得できるマイクロソフトのデバイス。Azure Kinect を使用。 

菅野: まさに一瞬を切り取ったものが再構築されて空間化していくということですね。通常は、カット割りや画角が演出コンテに決められていて、それを撮るプロセスが撮影ですが、今回は様々な方法でスキャンされたものが統合され、そこからソフトウェア上で撮影が始まっています。

辻川: ゲームエンジンのUnityを今回は動画制作のツールとして使いました。

村田洋敏(以下、村田): 僕はKinectを使った動画としての人物の3Dスキャンと、Unityを使って様々な手法でスキャンされたデータを映像に落とし込んでいくパートを担当しました。監督とはライティングやカメラワークについて、連携しながら時間をかけて作っていきました。初めての技術だったので、ツールの使い方を勉強する所から始めました。

辻川: 色々やりたくなるところをぐっと我慢して、シンプルに収めていったのがすごく良かったですね。

村田: そうですね。データを使っているとどうしてもデータビジュアライズ的でゲーム風にしてしまいがちなところが、監督のディレクションのおかげで、抑制されたクオリティ高い表現になったと思います。

辻川: Kinectはどういう原理でスキャンしているんですか?

堀宏行

堀: 赤外線を照射して、反射して戻ってくるまでの時間を計測して距離を計算しています。

村田: できるだけパフォーマンスの様子を収録できるように、今回は9台のKinectを同時に録画できるシステムを作りました。

辻川: それを後でガチャっとひとつの画像にするという感じです。ライティングも、データに対して後からやるという考え方ですよね。要するに、現場は光を選ばなければいけないものだけれど、今回に関してはその現場で光は作らず、後でライティングします。取得したポイントクラウドの点を、いわゆる絵画の点描の点と捉えて後でタッチをつける方法で試したのが今回の画づくりの一番大きな目標です。

※ポイントクラウド…位置情報や色などの情報を持つ点群データのこと。

菅野: 全く違う手法を織り交ぜながら、どうやってひとつの画にまとめていったんですか?

堀: 例えば、船の周辺は解像度と色を高いクオリティで必要としたので、写真から3D再構築を行うフォトグラメトリーという技術で形状を取得しています。また、主に建築の測量でよく使われる機材であるLiDARスキャナは、かなり遠くまで撮れるという特徴があります。今回採用した機材は形状だけではなくカラー情報も取得できるため、船から少し離れたところまでLiDARスキャナで撮影し、演者の動きなど、時間軸を持ったものはKinectを使って撮っています。

堀によるLiDARとフォトグラメトリの構成イメージ

フォトグラメトリー…被写体をさまざまなアングルから撮影し、そのデジタル画像を解析、統合して立体的な3DCGモデルに変換する技術。/LIDAR…レーザー光を照射して対象物までの距離を計測するセンサー技術

辻川: 同じような方法で、楽器や石など撮る範囲が限定されているものはフォトグラメトリーでやると精度が高くなるので、解像度が違う3つの方式を混ぜながら見せたいものを見せられるようライティングしていきました。その点が絵を描くのと非常に近い感覚なのかなと思います。

時間軸を超えた共有体験

黒川瑛紀(以下、黒川): 今回、僕はオンラインライブを配信するウェブサイトとサイト上の演出などを担当させていただきました。

黒川瑛紀

黒川: Unityで書き出された映像がブラウザ上で再生できるようになっており、さらにユーザーのインタラクションやリアルタイムのエフェクトが上から乗るような状態になっています。例えば、白いオーブのような物体は、事前にユーザーがライブを観た時のリアルタイムのマウスのデータです。他の人が後から再生すると、サーバーに保存されていたマウスデータのポジションが再生されて、魂のように空間に浮かぶのが見られます。観る人が増えるたびに魂がどんどん更新されて、まるで一緒にライブを観ているような体験になっています。

© YAKUSHIMA TREASURE

菅野: ライブパフォーマンスを観るという行為でとても重要なのが、一人ではなくそれぞれ違う角度から多くの人とその場を共有していることだと思います。オンラインでは同時にみんなが観ているわけではないけれど、同じライブを体験していた人の存在が残像として積み重なって、共有体験になっていく。それが一回性のある屋久島で行われたライブを再構築した上で、時間軸を超えた新しい「アナザーライブ」としての共有体験になっているということですね。

西村: ライブとは何か、みたいな議論が繰り返されてきていると思いますが、他の人の息づかいが見えるとか、空間の中に入り込める感じを大事にすというところが今回一番力を入れたところですね。

辻川: この体験は、感覚だけは没入させるけど、視線の誘導はしていますよね。本来、映像というのは、VRのような「全部見せたい」とは真逆の考え方で、切り捨て、フレーミングしていくことに価値があります。今回の映像からは、その間の絶妙な心地良さを感じることができました。

西村: やりたいことがたくさんある中、削ぎ落として今回は一つの答えとして出力したので、手元に残ったデータを元にまた違う見せ方にもチャレンジしたいです。

YAKUSHIMA TREASUREとエコツーリズムの可能性

菅野: 今回のANOTHER LIVEプロジェクトは文化庁の文化芸術収益力強化事業の一環として始まりました。コロナ禍でアーティスト活動が制限されてしまっている中で、どのように既存のファンや新しいオーディエンスと繋がるかということを課題にした事業となっています。

多くのアーティストはストリーミングでライブをやるなど、一生懸命模索しているわけですが、詰まるところ同じ場に集まって、同じ空気を吸うことの代替物はないと思うんですよね。だからこそ普通の映像配信とは違う体験をつくろうと始まりました。

宇川直宏

宇川: 僕はYAKUSHIMA TREASUREにはエコツーリズムの概念とぴったり接続するものがあると感じています。GO TO キャンペーンの思想を深めるためにも一役買うのではないかと(笑)。例えば、後退したリモート以降の都市、特に渋谷などにグリーンリカバリーの概念を持ってくることによって復権すると信じています。

神話や伝説の歴史軸を垣間見るだけではなく、それを踏まえた展望をいかに現在時間と接続するのかがポストパンデミック以降のクリエイティビティ、もしくはツーリズムをも含めた意味での世界の健康に関わってくるという発想です。その点、YAKUSHIMA TREASUREのコンセプトにとても共感しています。

コムアイ: 決して懐かしさだけではなく、色々な時間・時空といまが交差する瞬間を目指しています。そのために音楽というドアがあるということが嬉しいなと、最近改めて感じていますね。私は熊野のフィールドワークを通して滝に取り憑かれているので、ぜひ次回は滝をテーマにやりたいです。

宇川: 2020年のとある時間軸を、空間のデータとして情念と共に封じ込めている。これってすごい価値ですよね。

ライブ配信情報

「YAKUSHIMA TREASURE ANOTHER LIVE from YAKUSHIMA 」
公開期間:2021年2月11日(木)〜2021年3月31日(水)
料金:500円
特設サイト:https://another.yakushimatreasure.com/

※推奨視聴環境は以下の通り。
[PC]
Windows 10:Microsoft Edge最新版、Google Chrome最新版
macOS 10.12以上:Google Chrome最新版
[スマートフォン]
iOS 14.2以上:Safari最新版
Android OS 8.0以上:Google Chrome最新版

CREDIT

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TEXT BY NANAMI SUDO
栃木県出身、1998年生まれ。2020年早稲田大学文化構想学部卒業後、フリーランス編集者に。主にWEBサイトやイベントのコンテンツ企画・制作・広報に携わっている。2023年よりWhatever inc.でProject Managerとしても活動中。

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