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More than logos:ことば以上のもの (3)
2017.08.25
「インターネットは移ろいゆく無常の自然」 ラファエル・ローゼンダール×田中良治
ラファエル・ローゼンダール×田中良治(セミトランスペアレント・デザイン)
シンプルな造形と動き、象徴的な色彩、遊び心に満ちたプログラム映像とインタラクションをウェブ上で発表しつづけ、インターネットアートの代表的存在であるアーティスト、ラファエル・ローゼンダール。一方ウェブサイトのデザインから展覧会での作品発表まで、デザイン/プログラミング領域で多彩な活動を展開しているセミトランスペアレント・デザインを率いる田中良治。個展「Convenient」を開催していたTakuro Someya Contemporary Art / TSCAにて対談を行った。
展示作品《Abstract Browsing tapestries》は、ウェブページの画面構成を抽象化した絵画作品。ジャガード(ジャカード織機を使用して製作された織物)のテキスタイルによってビジネス・インサイダー、Netflixなどおなじみのウェブサイトが表現されている。プログラム作品《Abstrat Browsing .net》は、ウェブページ上にある情報(PCのブラウザ上の画像、配置、テキスト)をすべて明るい色の幾何学的な配置に反転するGoogle Chromeのプラグインとして公開されている。
ラファエル・ローゼンダール
1980年オランダ生まれ。NYを拠点に、スタジオを持たずにオンラインで世界中のあらゆる場所で制作を続けるアーティスト。インターネットアート・シーンの先駆者として、ウェブブラウザを作品化し、公開ドメインごとに販売する手法で一躍注目を集める。インターネットと物理世界を行き来しながら、独自の洗練されたビジュアル観で軽やかに作品を生み出していく。現在は世界各地のミュージアムやギャラリー、ときに公共空間などで作品発表する。
http://www.newrafael.com/
田中良治/セミトランスペアレント・デザイン
ウェブデザイナー。1975年生まれ、三重県出身。同志社大学工学部/岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー卒業。2003年にセミトランスペアレント・デザイン設立。ウェブサイトの企画・制作から国内外の美術館・ギャラリーでの作品展示までウェブを核とした領域にとらわれない活動をおこない、国内外の広告賞を多数受賞。主な活動にセミトラ インスタレーション展『tFont/fTime』(山口情報芸術センター)、光るグラフィック展(クリエイションギャラリーG8)の企画、セミトランスペアレント・デザイン退屈展(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)、ICC OPENSPACE 2015への参加などがある。2015年JAGDA新人賞受賞。http://www.semitransparentdesign.com/
ウェブのコンポジションを抽出する
田中:昨年1月にTSCAで展開した展覧会タイトルは「Somewhere」でしたね(「Somewhere」展ステートメント)。今回のタイトル「Convenient」にはどんな意味が?
ラファエル:テクノロジーは「便利さ」をドライヴしていますが、その便利さのゆえに私たちは普段から色々なものを失っています。プライバシーだったり、オープンソースソフトウェアが相対的に弱体化したり。以前からそうでしたが、現代は特にその速度が加速している。コンビニエンス=便利さというのは人間が怠けることでもある、そんなメッセージを込めています(「Convenient」展ステートメント)。
ラファエルさんは元々ウェブブラウザをメディウムとしていましたが、ここ最近はその「便利さ」から逃れるように、ジャガード織りを用いた今回の新作《Abstract Browsing tapestries》のような物質的な作品に移行していますね。今回の作品の着想はどこにあったのでしょう?
ラファエル:このプロジェクトを始めたのは3年前。もともとのアイデアは、違う作品のために、Google Chromeのプラグインを使って自分が見たウェブサイトを毎日記録していたことでした。クリックすると、テキストが消えてレイアウトだけになるというもので、ウェブのシェイプ、構造、コンポジションだけを抽出していったんです。そうして集めた膨大な量のサイトを眺めているうちに、視覚的なコンポジションへのアプローチの違いの面白さに考えが至りました。
どんな違いが面白かったのでしょう?
ラファエル:アーティストにとってのコンポジションは自身の判断。一方、ウェブサービスのそれは、デザイナーの意思ももちろん含まれてはいるけれど、最も大きな要素は“効率性”にあります。つまり、美しさが第一ではなく、プログラマの都合や、マーケティング的視点、ABテスト、マシンラーニングといった、何人もの人間やプログラムによる複合的な要素から構成されている。すべては“ユーザーのため”に考慮されていて、バナーをちょっと上に置けばクリック率が上がるとか、そうしたことです。それらを浮き上がらせることがこの制作のモチベーションでした。
田中:インターネットアートに身を置いてきたからこその、とてもラファエルらしいモチベーションですよね。
ラファエル:デジタルフォトは何千枚だって作ることができますが、どの写真が美しいのかは誰かが選ばなければならない。今ではマシンラーニングが選び出せるようになってもいて、その選出のプロセスを人間と機械が一緒にできたら面白いと思ったんです。
作品にするブラウザ画面として、「ビジネス・インサイダー」や「Netflix」などのメディアを選んでいった基準はどこにあるのでしょう?
ラファエル:このシリーズは最初にLAで発表したこともあり、当初のアイデアはカリフォルニアのスタートアップのウェブを網羅するというものでした。そこから面白いコンポジションを見つけていったんです。
そこでは、表現をピュアにするだけではなく、ある程度選んだメディアに意味を持たせることも重要でした。例えば「ビジネス・インサイダー」は商業メディアのブログですが、そこにはプロデューサーがいて、デザイナー、ライター、エンジニアがいて、広告、セールス担当がいる。この四角形の中に、アナリティクスのコードを入れたいという営業と、ページが長くなるからカットしたいというプログラマといった、色々な立場の人の思惑が詰まっているんです。つまりこのコンポジションには、たくさんの人々が戦った結果が現れているんですよね。要は大量生産のためにクリエイティブに制約がかかるということが私の興味のあるところでした。
コンピュータの原型、ジャガード織りと現代ウェブ
田中:それをジャカード織りに変換したということですね。興味深いのはラファエルのメディウムの見つけかたです。こうしたマテリアルにはどうやって出会うのでしょうか。積極的に探して見つけたのか、それとも日々の活動を通して気付くのでしょうか?
ラファエル:テキスタイルというものが、まるでコンピューティングのように作られているという理由が第一にあります。最初にその面白さを知ったのは、アーティストレジデンスでトルコに行った時に、ローカルな織物職人のところを巡ったときでした。彼らの生み出す織り目が、まるでピクセルのようだったんです。
もともとテキスタイルは18世紀まで人の手で作られていましたが、19世紀初頭にパンチカードを用いるジャガード織り機が誕生します。これがコンピュータの原型でもあったという話は有名ですね。オルゴールがパンチカードの情報から音を奏でるように、ジャガード織りも0と1だけで構成された情報から、非常に複雑なパターンを編み出すことができる。こうしたプログラムのアイデアがやがてコンピューターへと発展していったんです。そうしたデジタル手法を介することで、アーティストの思惑が介在しないアウトプットに達するという結果に興味がありました。
田中:なるほど、ただ各コンポジションの色の選定はラファエル自身が選んだものでもありますよね。
ラファエル:色はひとつの作品に最大5つと決めました。それもプログラム上でランダムに選んでいるのですが、そのままだとコントラストがはっきりしないので、最もコントラストが生まれるような配色だけは私が決めています。
インターネットは移りゆく無常の風景
田中:うん、何度見ても面白いことに、このジャガード織りのテキスタイルはやっぱりインターネットの延長にあることがわかる。何よりラファエル自身がインターネット好きだという感覚が伝わってきますよね。
ラファエル:私は毎日ネットサーフィンしていますし、インターネット中毒です。ただ、いまは誰もがインターネット中毒の患者であり、本来すべきことを後回しにしてしまいがちで、そこに罪悪感があったりしますよね。この作品はYouTubeを見ていても、ネットショッピングをしていても、すべて仕事になるのがよかったですね。
ラファエル:私はいつも、「現代人にとって何が風景なのか」を考えています。もともと画家が海や草原などの自然を描いていたのは、その目前にある自然が美しいものだったから。ポップアーティストはそこから「僕らが見ている風景はスーパーだ」と宣言して、スーパーマーケットを描いたわけです。そしていま、私たちはスクリーンにエキサイトしているので、インターネットは私たちにとって風景の一部です。でも一日の終わりには罪悪感があって、「もっと自然の中で過ごせばよかった」なんて人は言うけど、実際はスクリーンばかり見ていますよね。良治さんはインターネット中毒じゃない?
田中:僕もインターネット依存症だったけど、子どもが生まれてもう少し物理世界に目を向けるようになりました。それは僕にとって新しい世界にもなったんですよね。一方でネットサーフィンからイメージが湧いてくるというのはすごくわかります。ちなみに、ラファエルはスピリチュアルな方面に興味があったりしますか?
ラファエル:私の興味は毎日の生活の中にある「美」にあります。美を表す「Ethsetic(エスセティック)」という言葉は、もともとギリシャ語で「感覚・感性」という意味でした。つまり個々の審美眼が重要というか、何がきれいかを伝えるということは「知覚をはっきりさせる」みたいな意味があるんです。私がやっているのは、インターネット上のスクリーンページのように、数秒で移ろいゆくものを捉えて、物理的なものに変換すること。知覚を強調されたものは、たとえ数十年経っても見られますからね。
デジタルとマテリアルの関係とは?
田中:ラファエルは現代美術のフィールドで活動していますが、エディションについてはどう考えていますか? 基本的に、写真作品などのエディションは原型のコピー数を指しますが、ラファエルのようにプログラムを介する作品の場合、コピーではなくジェネレート(生成)するという考え方でしょうか?
ラファエル:私の作品のエディションは、何ひとつ同じ絵にはなりません。プラグインは全員にとって同じものだけど、オブジェクトはひとつだけ。そもそも美術業界で「エディション」という概念が生まれたのは、非常に手間のかかる木版のような作品を手作業で作って、一回しか使わないのは勿体ないから何度も刷ってみてはどうか、ということで複製が作られた。でも今はファブリケーションによって、少数ロットのものが、すぐに何回でも作れるようになりましたよね。
田中:逆に今じゃないとできないあり方とも言えますよね。
ラファエル:しかし、デジタルのものは逆を言えばいくらでもコピーできるわけで、モノが再生産される時の誤差がほとんどありません。それが面白みを削いでしまう。このテキスタイルでは、織り目から予想外のモアレが生まれたのが良かったですね。それに今回使ったジャカードの織り機では一度に10種類の糸しか使えないので、20種類の色のベースを作りました。そうした物理的な制限があるのはいいことです。また染料を使った糸が複雑に絡んでいて、見えないけれど裏側も面白いんです。
田中:「マチエール(作品の材質がもたらす効果を指す美術用語)」ですよね。見えないところが影響を及ぼすのは僕もわかります。
ラファエル:絵画だと、ブラシの選び方から何から、作家が選択するということに解釈の幅が生まれてしまいます。それよりも、コンピュータースクリーンのように、解釈の余地が存在しないところを出したかった。それでテキスタイルを選んだんです。テキスタイルは古い技術なので、ゆっくり作っていけるのが良いところですね。
田中:すごくいいマテリアルとの出会いだなと思いました。出会いって不思議ですよね。僕自身もデザイナーですが、絵が描けないし、そもそも美術教育を受けていなので、ラファエルと考え方が近いところはあるとは思います。自分もデザインする時には、自分の癖をできるだけ出さないようにしていますし。
ラファエル:いくら幾何学的なペインティングを機械的に描いても、手癖というものは残ってしまう。フェティッシュに手癖を追求することに興味はないのですが、全部排除してデジタルにフォーカスしすぎても、やっぱり「そうじゃない」と思いますし...。
田中さんは素材に関してはどう捉えていますか?
田中:素材というものは、やっぱり使えば使うほど、自分の未知の領域になりますね。そういう未知との遭遇は楽しくはありますが、仕事としてやるときはどうしてもコントロールしたいので。
ラファエル:グラフィックデザインだと、マテリアルよりもディストリビューションが大事にされることが多いと思うんですが、それについてはどう思いますか?
田中:状況の変化は確実に起きています。それまでグラフィックの現場でディストリビューションが重要視されすぎていましたが、最近はグラフィックをスクリーンで見ることが第一となる機会が圧倒的に増えてきました。そうした問題提起から企画したのが「光るグラフィック展」です(※2014年にクリエイションギャラリーG8で開催された田中良治企画の展覧会。ラファエル・ローゼンダールをはじめ、菊地敦己、佐藤可士和、仲條正義、服部一成ら15組の作家が制作したグラフィックを、同一サイズのディスプレイを用いて展示するもの)。
ラファエル:良治さんが考えていた問題はわかります。ネット上ではないフィジカルな展覧会で、スクリーンの展示と物理的な作品が並んでいるものがありますね。ひどい時だと、スクリーンの中に異なるアーティストの作品を次々に流していることもある。同じスクリーンの中に複数のものが表示されることが、展示におけるスクリーンの限界だと考えているんじゃないですか? インターネットは滝のようであるのに、フィジカルな展覧会は水槽が並んでいる水族館のようなものなんです。
田中:僕よりも上の世代の日本のグラフィックデザイナーの人は、マテリアルの紙の質感をすごく気にしています。「光るグラフィック展」でその世代の大御所たちをお呼びしたのはスクリーンを新しいマテリアルとして見てほしい思いがやっぱりあったんですよね。
マテリアルといえば、ラファエルさんの前作『Somewhere』(2016年)はレンチキュラーの作品でした。
ラファエル:そもそもレンチキュラーを使ったのは、展覧会の招待状を動かしたいと思って。テストをしたものをInstagramにアップしたら、コレクターから「買いたい」と連絡が来てプロジェクトになりました。キャリアを始めた頃から「動く絵」に興味があったんですが、この作品を作るまで、絵が動くのは必ずスクリーン上じゃなきゃいけないと思っていたんです。最初はリアルなアニメーションを作っていたのですがフレーム数が少ないのでアブストラクトなものに変えて、動きのパターンのアルゴリズムだけを作って大型の絵画にしました。
田中:そういう経緯がすごく面白いです。なんというか導かれていく感じがあるんでしょうね。
ラファエル:「この人はラッキーだな」と思われる人は、実際には周到な準備をしているんですよね。私は基本的に、コンピュータを使って仕事をしていて、タスクが自動化されているので毎日続けられるんだと思うんです。もしこれがフィジカルなペインティングだったら、キャンバスを貼るところから始めなければならない。もちろん新しいことにチャレンジする時にはそれなりに時間をかけますが、コンピュータによって効率化しているからいろいろ新しいことにチャレンジできる環境にあります。
田中:よくされる質問かもしれないですけど、自分が美術史のどういう位置にいるかは考えますか?
ラファエル:アートヒストリーの文脈はもちろんよく考えますし、時おりそれにフラストレーションを感じることもあります。もちろん100年後の人が自分の作品を好きでいてくれたら嬉しいですが、私が一番にフォーカスするのは「次の展覧会をいかに面白くするか」ということ。アートヒストリーは誰かが考えるものだし、他人の意見にフォーカスしすぎると頭がおかしくなってしまいます。
田中:ラファエルが憧れているアーティストはいますか?
ラファエル:河原温(1932/33-2014)のように、365日日付だけを描く作品を作り続けるといった、ひとつのことをピュアに続ける人が好きです。見る方としてはすごく面白いけど、自分自身ではそれはできない。本人が楽しい人生かもわからない(笑)。
田中:ラファエルも膨大な量のウェブサイトを作っているから、近いところはあるかもしれないですね。
ラファエル:確かに、私は最終決定が自分ではないところにあるというテーマがあるので、その点は一生同じことをするアーティストと同じかもしれませんね。ベートーベンのような作曲家は「この音がいいからここに置こう」と決定していましたが、私はそれと真逆の“託されたコンポジション”にすごく興味がある。
田中:同世代のアーティストだと?
ラファエル:友人にオースティン・リーというアーティストがいます。彼はコンピューターを使って“手癖のある”絵を描いているんです。
田中:もちろん知っています。オースティン・リーは、僕らの界隈でもすごく人気です。ちょうどつい最近、日本でもカイカイキキで個展をしていました。ちなみにデビット・ホックニーのデジタルペイントはどう思いますか?
ラファエル:好きですよ。彼の展覧会に行くと、「私も同じツールを使ってるから同じような絵が描けるな」と思います(笑)。
田中:今回展示しているもうひとつの作品《Shadow Objects》のオブジェクトではどう形を決めたんですか?
ラファエル:《Shadow Objects》は、機械が決めたパターンをレーザカッターによってくり抜いた作品です。オブジェクトのシェイプは、Webサイトの作品を作る時にベースのシェイプを決めるためにアルゴリズムで作った自分のライブラリを使っています。そのライブラリから決めた色や形をこれまでのウェブサイトなどで使っていたんです。今回はそのパターンを工業用のレーザーカッターに読み込ませ、ネスティング・アルゴリズムによって機械がカットし易いように自動的にレイアウトしていきました。最初はこのプログラムまで自分たちでやろうとしたのですが処理に時間がかかりすぎるので、いろいろ調べたところ、工業製品やパネル、部品を作るときにメタルシートをカッティングする際に使われるプログラムが既にあったんですよね。
田中:形を決めるのはそういう手順でやっているんですね。形を作ることって、すごく怖くないですか。
ラファエル:私が仕事をするときピクセルもベクターも使うんですが、ベクターをマテリアルで展開するのを考えた時に、一番近い行為がメタルをカッティングすることでした。
田中:ネガが作品になっているというか、切り取った残りの方が使われているのが面白いです。
ラファエル:イメージを作る時にはたくさんの要素がありますが、実際にマテリアルに落とし込む時になるべく変数を排除していきたいんです。モノにはマテリアルとか、色とか、コンポジットとかシェイプがある。この作品には色がない代わりに、壁から5cm浮いていることによって、光の具合で違う影が生まれます。ここにオーガニックな要素をもうひとつ入れ込みたかったんです。
田中:ドロップシャドウですよね。インターフェースデザインの世界ではフラットデザインが主流になったので、最近あまり使われなくなったけど。これはリアルドロップシャドウだ。
ラファエルはファブリケーションにはすごくポジティブなんですね。
ラファエル:NYのクリエイティブ集団Rhizomeのライターが書いていて印象的だったことがあって、初期のデジタルアートはすごくフィジカルだったというんです。1960年代、ディスプレイは小さいプロセスもスローで、当時のアニメーションはプリントした絵を1コマずつ連続して見せていた。いまはコンピューターの性能が上がったから、表現できるマテリアルもすごく増えたし、アーティストがフィジカルにとらわれずに作品に向き合えるようになったんです。
田中:ラファエルは、インターネットアーティストと言われることに異存はないですか?
ラファエル:すごくポジティブに捉えています。特にインターネットで物事がシミュレーションされる仕組みはアーティストにとっていいことだと思っているんです。これまでは何ヶ月もかけて描いた絵も、展覧会の後は誰の目にも届かないところに収納されていたけれど、インターネットがあればいつでもその作品と出合うことができる。音楽家の楽曲だったらいつでもオンラインでアクセス可能になったように、自分はいつもアクセスできるところに作品を置いているし、その志向性こそ自分がインターネットアーティストと呼ばれている所以だと思っています。
協力: Takuro Someya Contemporary Art / TSCA
通訳:太田禎一
CREDIT
- TEXT BY AKIKO SAITO
- 宮城県出身。図書館司書を志していたが、“これからはインターネットが来る”と神の啓示を受けて上京。青山ブックセンター六本木店書店員などを経て現在フリーランスのライター/エディター。編著『Beyond Interaction[改訂第2版] -クリエイティブ・コーディングのためのopenFrameworks実践ガイド』 https://note.mu/akiko_saito
- PHOTO BY GOTTHINGHAM
- 写真家。様々な領域において、キービジュアルなどの写真撮影・映像演出を手掛ける。近年は、国際的な研究開発機関、アートセンター、企業、地方自治体などとのコラボラティブ/コミッションワークを中心に作品制作を行うほか、出来事の構造探求を起点に、「パラノーマル」と呼ぶ手法を用いたビジュアル・ディレクションやアーティスティック・リサーチのアサインも多数行う。2009 年~2012 年、アーカスプロジェクト実行委員会(主催:茨城県)にて、国際アーティスト・イン・レジデンスや地域計計画事業の企画・運営・プロモーション制作に従事する。ロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーション修士準備課程修了(写真)。 http://gottingham.com/