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2023.03.29

世界のラボが集う「ハロー!ラボラトリーズ!Vol.01:ラボで駆動する、世界の文化拠点」レポート

TEXT BY KENTARO TAKAOKA

文化施設内に併設されたラボラトリー(ラボ・研究所)では新たな試みが行われ、外部へと発信される。世界各国のラボの現状を共有するために、運営関係者を招いたトークイベントが東京・渋谷に新設されたシビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT](以下、CCBT)にて開催された。こうしたラボを起点にした取り組みは、市民・都市とも関わり合い、社会に変化をもたらしていく。聴講者として集った市民も交え、さまざまな事例をもとに創造性を社会にインストールするための可能性を探ったトークイベントの様子をお届けする。

CCBTでは、アート、テクノロジー、デザインの多様なトピックを学ぶトークやレクチャー、コミュニティ形成を行うミートアップイベントが定期的に行われる。その中で、オープニング記念特別企画第2弾として行われたトークイベント「ラボで駆動する、世界の文化拠点」は、世界5都市の文化拠点からラボ運営の実践者らが集い、各施設のラボを中心にした芸術文化活動を紹介するもの。

海外からゲストとして登壇したのは、イギリス・Watershed、オランダ・Waag Futurelab、台湾・Taiwan Contemporary Culture Lab(以下、C-LAB)。そして日本からは、山口情報芸術センター[YCAM](以下、YCAM)、そして今後ラボを本格始動していく予定のCCBTが参加。各施設の方針やラボを通して行ってきたプロジェクトなどをプレゼンテーションし、来場者含めたディスカッションでそれぞれの知見が共有され、4時間弱に及ぶイベントとなった。

Watershed:地元ブリストルと一体となり、未来をともにつくっていく

 

Clare Reddington 

Watershed CEO

2004年にWatershedに参加し、「Pervasive Media Studio」や「Playable City」など、テクノロジーを用いたクリエイティブ事業を立ち上げる。2018年にCEOに就任。世界中の産業界、学術界およびクリエイティブ業界と連携し、インクルージョンや人材育成、新規アイディアの創出を支援している。現在、西イングランド大学の客員教授を務めるほか、エマ・ライス率いるシアター・カンパニー「Wise Children」の会長、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーとブリティッシュ・カウンシルの理事も務めている。

まずはイギリスの南西にある港町ブリストル市にあるWatershedから、CEOのClare Reddington氏が登壇。「Watershedは、アートの力を前面に出して必然性を越えて創造できる場所であると信じています。ここでは遊び心を持ち、包摂的で、持続可能な未来への旅を生み出します」と施設の方針を語り、そこから作家でありアクティビストのレベッカ・ソルニットによる言葉を引用した。「希望というのは、何が起こるかわからないという前提の中に存在します。そして大きな広い不確実性は行動する余地を作ります」。ラボというものはまさにそういった不確実な場所であるということが、とてもエキサイティングだという。

Watershedは、イギリス初のメディアセンターとして、通信、コミュニケーション、メディアを習練させるために1982年に設立された。1980年代は理解者が少なく孤立していたが、地域社会とのコミュニケーションを行ったことによって環境が大きく変わったという。

「私たちのヴィジョンは一体感をベースにしています。世界が直面する複雑な課題を解決するためには、新しい想像力を開発しなければならないと私たちは考えています。その1番良い方法は一緒に取り組むことです。一体感を持つことがその希望の未来を可能にすると思っています」

ブリストル市は、組織に大きな影響を与えてきた。小さい都市ではあるが、クリエイティビティとイノベーションをキーワードに、型破りで多様性があり、反抗的で先駆的な街の雰囲気があるという。それはブリストルを拠点に活動をしてきた国際的に知られるバンクシーやマッシヴ・アタックなどの作品からも伝わるはず。そういった街の雰囲気を表したWatershedで生まれた作品が、Luke Jerramの「Park and Slide」。空気を入れて膨らませたウォータースライドを中心街の丘に設置した作品で、これによって街とのつながりが一層生まれた。

過去15年間クリエイティブやテクノロジーの分野でさまざまな変化を見てきたClareは、「昔はテクノロジーとは輝かしい新しい未来の象徴だったが、今では受け取り方が変わり、市民や地域への脅威とも考えられるようになった」と言う。ブリストル市も町がジェントリフィケーションされ、格差は拡大し、文化的に生活を脅かす状況になり、Watershedとしては、こういった課題に対応する義務があるという。そして「さまざまな人を呼び込んで社会におけるテクノロジーをうまく使い、私たちの現代の難しい問題を明らかにして、希望の精神を維持して取り組んでいきたい」という言葉で括った。

Waag:歴史を受け継ぎ、テクノロジーをベースに共創する

 

Lucas Evers

Waag Futurelab「Make」代表「Open Wet Lab」責任者

2007年にWaagに参加。現在、ワーグ・フューチャーラボの「Make」プログラム研究グループ代表を務める。15人の様々な研究者や協力者とともに、「Make」を構成する事業、「Fablab」「Open Design Lab」「Textile Lab」「Open Wet Lab」「Space Lab」のプロジェクト開発に従事。「Make」の研究では、人工的な(および人工的でない)物質がもたらす現実を考察し、その代替案を生み出している。マーストリヒト美術デザインアカデミー(現マーストリヒト・インスティテュート・オブ・アーツ/ゾイド応用科学大学)で美術と教育を専攻し、アムステルダム大学で政治とパブリック・ガバナンスを学ぶ。芸術的、科学的、その他の研究手法間の相互作用、相違点と共通点から得られる学びの手法に関心を持つ。

続いての登壇者は、オランダ・アムステルダム市にあるWaag Futurelabの「Make」代表であり、「Open Wet Lab」責任者のLucas Evers氏。Waag Futurelabは400年以上前に建てられた建築物内にあり、人体を研究するための解剖が行われ「医学のゆりかご」と呼ばれていた、まさに歴史的なラボがあった場所に居を構える。

まずは科学史家ダナ・ハラウェイの引用から始まった。「テクノロジーは中立ではない。私たちは作るものの中に存在し、作ったものは私たちの中にも存在する」と言い、「ここで認識しなければならないことは、これは当たり前のことではない、つまり変えることができる。同時にそれと一緒に私たちは共存しなくてはならない。場合によっては、それを排除しなければならないということです」と述べた。

Waag Futurelabの組織は、「科学」「技術」「アート」の交差するところに着目し、その専門知識を踏み込んで、さまざまな人を関与させることを重要視することが、社会変化の手段となるという。その指針となる価値観は「公平性」「開放性」「包摂性」。

そしてミッションとしては「持続可能な公正な社会の研究、設計開発に貢献すること」。それを実践する方法として、まず根底にある「文化的前提に疑問を投げかけ、実験設計をすること」。そして公共資金を使うので、「市民を研究コミュニティに巻き込むこと」の3つを掲げている。

3つのリサーチの柱は「コード」「ライフ」「メイク」。なかでも興味深かったのは、リサーチと市民参加を行った、公正な携帯電話を作るというプロジェクト。携帯電話の原材料は、軍事政権下で掘削をした資源や児童労働で得た資源などがある。携帯電話をハンマーで壊して、コバルトなどの材料資材を取り出し、そこからまた携帯電話を作る。そして、私たちのコミュニケーションの元となっている、すべての原材料を発見するプロジェクトとなる。このプロジェクトのように一般市民に参画してもらうために、市民と連携することの重要さを強調していきたいという。

アムステルダム市以外の市民に大気汚染を評価測定できるキットを提供してデータを集める大規模なプロジェクトなど、生活に身近なものが参加の糸口になる。そして、テクノロジーをベースに公共価値を作り、共創を進めていくのが重要だと語る。

「Waag Futurelabのクリエイティブラボを使って市民の方々が技術を得たとしても、市民が技術を活用して作ったものに対して、まだ慣れていない社会や会社があります。そのために、私たちはクリティカルメイキングを続けていきます」と締め括り、新興技術を市民社会へ結びつけていく意気込みを語った。

Taiwan Contemporary Culture Lab:元軍事基地を文化とイノベーションのラボへ

 

LIU Yu-Ching

Taiwan Contemporary Culture Lab(C-LAB)マーケティング&パブリック・プログラム部長

Taiwan Contemporary Culture Lab(C-LAB)に2018年の設立当初から勤務する。C-LABが拠点としている場所と歴史を研究するかたわら、2018年から2020年にかけてオンライン・マガジン「CLABO」のチーフ・エディターを務める。2020年から、マーケティング&パブリック・プログラム部長として、PR、マーケティング戦略、海外連携、および出版を担当。C-LABの施設や現代アート、テクノロジーメディアプラットフォームを紹介・推進するための様々なプログラムに携わっている。C-LAB以前は、文化芸術関連のニュースを扱うジャーナリストとして活動。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジにてMAを取得。

続いてのプレゼンターは台湾・台北市にあるC-LAB のマーケティング&パブリック・プログラム部長、LIU Yu-Ching氏。C-LABは、「アート」「テクノロジー」「社会」という3つの方向性を持ち、スタッフ50名によって台湾生活芸術基金と文化庁の支援を受けて運営されている。台北・大安区の高級住宅街の高層ビルに囲まれた場所を拠点とし、約7ヘクタール(サッカーグラウンド10個分)の広さで、オープンな空間が潤沢にある。 

C-LABがある場所は、1937年には台湾総督府の工業研究所があり、科学や産業の研究が行われていた。1950年以降、台湾国防軍の総司令部に変更され、その後2018年に台湾政府によってカルチャーラボが設置されるという歴史的な経緯を背負っている。その中のひとつとして文化とイノベーションのラボであるC-LABが作られた。

プラットフォームが2つあり、ひとつは現代美術、もうひとつはテクノロジーやメディアに関するもの。このプラットフォームは、テクノロジーを中心に据えた実験を中心に、イノベーションや社会的なつながりに焦点を当てている。そうすることによって、文化的な分野とテクノロジーの分野、両方で機能することができるように意図したという。

ラボは2種類あり、映像表現と音楽表現がある。ひとつはドームの空間の中で行われる科技媒体実験台(Future Vision Lab)。没入型のオーディオビジュアルによるプレゼンテーションができるドームは、直径12メートル、高さ6メートル、180度のビデオプロジェクションが可能。サラウンドサウンドシステムが装備され、音楽と映像をかけあわせたさまざまな作品が実験制作される。 

もうひとつのラボは、台湾声響実験室(Taiwan Sound Lab)。このラボは、音響、音楽をコーディネーションしている研究所で、フランスのポンピドゥー・センターの組織と提携して2019年に出来上がった。台湾声響実験室のミッションは、「学祭性イノベーション競争」「リサーチ教育技術」。イベントとして 「Wandering Sound Festival」を毎年開催。台頭しつつある新進気鋭のアーティストや活躍中のアーティストが参加して、ラボを盛り上げている。

シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]:コンピテンシーとコンポーザビリティに向けたラボ

 

廣田 ふみ

シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]

IAMASメディア文化センター、山口情報芸術センター[YCAM]を経て、2012年より文化庁にてメディア芸術の振興施策に従事。文化庁メディア芸術祭および海外・地方展開を含む事業を担当。2015年より国際交流基金にて、日本と東南アジアの文化交流事業の一環としてメディア文化、メディアアートをテーマとした事業を企画。2020年より現職。東京都の文化施設が有する収蔵品等の文化資源をデジタル化し、多様な形態での鑑賞体験を提供する「TOKYOスマート・カルチャー・プロジェクト」等の立ち上げに参加。2022年には、渋谷のシビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]の開設に参画。

今回のイベントの主催であり会場となったCCBTの活動紹介が、廣田ふみ氏によって行われた。2023年の10月23日にオープンしてわずか半年のCCBT。オープニングイベントでは市民らとともに競技づくりから行う「未来の東京の運動会」、オープニング企画では明和電機の展示、その間にミートアップやワークショップを継続して実施している。できたばかりのCCBTはラボをどのように醸成していくかを思案中のため、今回、ラボを起点にさまざまなプロジェクトを現在進行形で行っている施設の関係者を登壇者として招いた経緯がある。 

CCBTは、東京都と東京都歴史文化財団が主催・運営し、人々の創造性を社会に発揮する「シビック・クリエイティブ」のための活動拠点として設立された。、4つのミッション「発見」「競争」「開発」「連携」を掲げており、このミッションを元に、4つのコアプログラムを実施する。それらは、トークイベントやレクチャー等を行う「CCBT Meetup」。CCBTがパートナーとなり、選出された企画を具体化させるアーティスト・フェロー制度「アート・インキュベーション」。アート&テクノロジーを実践的に学ぶワークショップ「アート×テックラボ」。レクチャーやWS、協働のプロセスを通して社会課題に取り組む短期集中プログラム「未来提案型キャンプ」がある。

CCBTの名付け親である、コラボレーションメンバーの齋藤精一氏(株式会社アブストラクトエンジン)は、シビッククリエイティブを「コンピテンシー」と「コンポーザビリティ」という2つの視点からとらえている。市民が受け手ではなく作り手になってコンピテンシーを発揮する場所にしていくこと。そして、コンポーザビリティとして足りないものを補い合っていく、持ち寄って共有していく、そのプラットフォームになることが重要となる。その原動力としてラボが必要であると語り、今後CCBTに併設されるラボへの期待感を高めていた。

山口情報芸術センター[YCAM]:場所ではなくメンバーで形成されるラボ

 

菅沼 聖

山口情報芸術センター[YCAM]社会連携担当

山口情報芸術センター[YCAM]で研究機関、自治体、企業などとの共創事業を担当。YCAMがメディアアートのクリエイションで得た知見を応用し、多様なコラボレーターと共に社会に新たな価値を創出する共創の枠組みづくりに取り組む。2019〜2020年文化庁在外研修にてAalto Media Lab 学習環境デザイングループ客員研究員。2021年〜ソニーコンピュータサイエンス研究所 Superception Lab 非常勤リサーチャー。光村図書 美術教科書(中・高)編集委員。

最後にYCAMの社会連携担当・菅沼聖氏が登壇した。YCAMは本州最西端の山口県山口市にあり、2003年に開館。メディアテクノロジーの応用可能性の探求をベースに、芸術表現について考えること、公共文化施設として取り組む教育、そしてコミュニティをミッションとしている。

館内の施設としては、劇場や映画館、図書館、展示が行われるホワイエ、スタジオがある。その中で、館内でラボ的な機能を持った場所は、あらかじめラボとして作られたわけではなく、スタッフが作業しやすい場所に必要に応じて作られてきた。例えば、3Dプリンターは機材を置く場所ではなく荷解き場に置かれ、2015年に建てられたバイオラボは、会議室や託児所がある場所にできた。もともとラボを想定して作られた場所ではない点がおもしろいところだ。

その中でも重要なのはスタッフの形成。YCAMにはプログラマー、エンジニアリング、デザイン、舞台制作、映像、音響などテクニカルな要素を担うスタッフとアート、パフォーミングアーツや映画のキュレーター、エデュケーター、広報担当、アーキビストといった学芸的な要素を担うスタッフによって形成される「YCAMインターラボ」がある。バックグラウンドの異なる約20名程度の構成だ。役職は専属というわけではなく、あるプロジェクトでは照明技術を担当していた人が、別プロジェクトではバイオテクノロジー領域を担当するなど、リサーチごとに変化していくフレキシブルな集団となる。

YCAMは主にメディアアートの制作を行い、山口の地で制作した作品を世界に発信していく。アーティストやクリエイター、研究者が山口に滞在し、YCAMインターラボと協力して制作を行う。これまでに350以上のインスタレーション作品、教育プログラム、パフォーミングアーツ作品を制作・発表し、これらの巡回数は200以上に及ぶ。

こうした活動を続けていく中で、YCAMインターラボの機能が拡張してきた。 最初はアーティストのサポートから始まり、その中でさまざまな技術要素、研究要素がスタッフに蓄積され、「誰かと誰か」「アイデアとアイデア」を結びつけるようなハブのような存在になった。

最後に、ラボは変化を柔軟に受け入れる存在であるべきだと述べた。「YCAMのラボの特徴として、メディアアート制作を通じて生まれたテクノロジーやコミュニケーションの知見をコラボレーションやオープンソースといった様々な形で、社会に還元していくスタイルがある。そもそもテクノロジーの性質として可変性や応用性が高く、それを見た人や使う人によってまったく違うアイデアに変わっていくことが起こりやすい。このサイクルによって、予想できないコラボレーターと出会うことが多く、予期できない価値を生み出すための創造のサイクルになっている。個人的には、ラボは変化に対応するためのシステムだと思っている。急速に変わっていく社会を受け止める存在としてあり、ラボの形は答えのないものです」

時代の変化に対応していくラボ

各施設ごとの個性が伝わるプレゼンテーションが終わり、ディスカッションが始まった。立ち上げからの変遷、組織の在り方、社会変化への対応などを各施設に伺った。

Clare Reddington(Watershed)「私たちは立ち上げから15年経っています。元々はプロジェクトベースで運営され、プロジェクトをたくさん用意して、その資金が足りなくなるとアーティストがいなくなっていました。それを変えるために、永続的な装置を作るためにラボのスタジオができたわけです。 

1番変わったことは、内製が重要だということです。3年間のコロナ禍の期間も理由のひとつですが、メディアスタジオを完全にオープンして、誰でも仕事ができ、リモートで自宅からも仕事ができるようにしました。この3年間は、元々あった原則を塗り替えて、誰でも歓迎し、社会の変化に対応してきました。それがとても重要なことだと思います。

 私たちが心臓の鼓動を止めないように注意深くケアをして、世界のことを考慮しながら市民の責任を果たすという意味では、とてもエキサイティングな時代だと思っています。 ですので、いままさにラボを再生したり刷新している段階になっています」

Lucas Evers(Waag)「現在、約50人が働いていますが、私たちも随分働き方を変えてきました。 国境を越えたコラボレーションも多く起きていますが、例えば旧植民地の国々との関わりのように、さまざまな国々と対応する難しさも生まれています。

また、私たちはオールドメディアからアートサイエンス、テクノロジーへとテーマを変えて、社会や市民と関わるようになりました。 そして、テクノロジーに焦点を置いて応用していくことで、アーティストとの関わり方にも注意をはらっています。 

私たちは、アーティストとともに実験を行うことは重要だということをすでに知っています。しかし社会課題、たとえば気候変動や経済的な格差をトピック化して、それをアーティストの皆さんに関わってもらう工夫がもっと必要だと感じています」

LIU Yu-Ching(C-LAB)「私たちは変化を遂げているところです。多くのプログラムを開催しながら、私たちが一体何者なのか、何をしていくべきかを明確化していっています。文化庁という公の機関にサポートしてもらっているので、できる限り一般市民に対してオープンであることが、元々設立した時からの責任です。 

現在、省庁からカルチャーパークの制作依頼があり、さらにパブリックなプロジェクトを進めています。単なる場所づくりではなく、人が中心になる公共的なプログラムを行うことになるので、人中心に方向性を切り替えているとも言えます」

 

これ以外にもさまざまな応答が行われたディスカッションは1時間超に及んだ。各施設の意見を通して、アーティストがテクノロジーを使って新しい表現をすることが一般的になっていること。そして、社会問題や市民参加にいかにテクノロジーを活用していくか、また人間を中心にしていく方向に指針を変えようとする組織の変化が感じ取れた。それらをつないでいくためのハブとなる存在が、今後求められるラボなのだろう。

CCBTで日々行われているイベントの多くは配信も行っており、本イベントのプレゼンテーションならびにディスカッションの様子はアーカイブされている。世界各国のラボについてより詳しく知りたい方は、動画もぜひチェックを。

photo:Tada(YUKAI)

INFOMATION

CCBT Meetup「ハロー!ラボラトリーズ!Vol.01:ラボで駆動する、世界の文化拠点」

日時:2023年2月25日(土)15:30-19:00
登壇者:Clare Reddington(Watershed)、Lucas Evers(Waag Futurelab)、LIU Yu-Ching(Taiwan Contemporary Culture Lab (C-LAB) )、菅沼 聖(山口情報芸術センター[YCAM])、廣田 ふみ(シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT])
日英同時通訳有
主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団
https://ccbt.rekibun.or.jp/events/meetup_hellolab01

 

 

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CREDIT

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TEXT BY KENTARO TAKAOKA
オンラインや雑誌で音楽、アート、カルチャー関連の記事を執筆。共編著に『Designing Tumblr』『ダブステップ・ディスクガイド』『ベース・ミュージック ディスクガイド』『ピクセル百景』など。荏開津広、寺沢美優とのグループ「Urban Art Research」で活動中。

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