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2021.06.16

NFTアート最新動向を探る。ライゾマティクス真鍋大度らによるトークイベント「NFT/CryptoArt Talk Session」

TEXT BY HIDETO MIZUTANI

いま注目を集めるNFT。ライゾマティクスは、ブロックチェーン技術に定評のあるスタートアップKyuzanなどと協働し、NFTアートの販売プラットフォーム「NFT Experiment」を始動。自社アートワークの販売を開始した。5月末、ライゾマティクスによる「STAYING TOKYO」で、NFTに関するトークイベントを配信。真鍋大度、kizunaの藤本真衣と絢斗優、株式会社Kyuzanの髙橋卓巳と小宮山凌平が登壇、その様子をレポートする。 

出演:(上段左から)真鍋大度、絢斗優、藤本真衣、(下段左から)小宮山凌平、 髙橋卓巳
いま、NFT業界はどうなっているのか?

冒頭ではkizunaの絢斗優氏によって、NFTが盛り上がりを見せるようになったきっかけや経緯、近年の業界環境について総括がなされた。

絢斗優

絢斗優(以下、絢斗):NFT自体は以前から存在していましたが、最初はNFTを使ったゲームが発明されて、それがアートの文脈で使われだしたのが2019年ぐらい。その後、コロナ禍のアメリカでSuperRare(NFTマーケットプレイス)などが大きな話題になりました。

さらに、2020年後半に「NBA Top Shot」の人気が急騰したことで、NFTは「儲かる」と認識されはじめました。アート全体の売上は上がっていないけれど、NFT自体の売上が大きく伸びたことで話題になった印象です。

真鍋大度

真鍋大度(以下、真鍋):最初はSuperRareで作品を出展している人が多かったですよね。SuperRareを含めて、最近のプラットフォーム事情について何か変化はありますか?

絢斗:各プラットフォームの特徴がそのまま進化しているので、あまり大きな変化はありません。eBayのようになんでも取り扱うプラットフォームであるOpenSeaがアートを推しはじめたことぐらいですね。やはり、SuperRareやKnownOriginはキュレーションに力をいれていますし、Raribleは玉石混交のカオス空間、一方FoundationはClubhouseのような招待制を取り入れていることもあり、いますごい勢いで伸びています。

真鍋:なるほど。メディアアート界隈では、Joanie LemercierやMario Klingemann主導で、環境負荷の少ないクリーンなNFTを謳っているhic et nuncというプラットフォームが支持されていますね。openFrameworks、proce55ingの ファウンダー界隈はここで出している人が多くライゾマのメンバーも個人ワークはここで出しています。

藤本真衣

藤本真衣(以下、藤本):環境負荷という視点で言うと、実はどのブロックチェーン技術を元にプラットフォームを作っているかによって、環境への負荷が変わるんです。例えば、メジャーなイーサリアム(ETH)よりもテゾス(XTZ)やワックス(WAXP)、フロー(FLOW)というブロックチェーン技術のほうが環境に良いとされています。

この流れはヨーロッパから始まったのですが、最近ではイーロン・マスクの発言でさらに環境への負荷が注目されるようになりました。どのプラットフォームに出品すべきかという問題に、多くのアーティストが悩まされている状況です。

真鍋:メディアアートの世界ではNFTの是非そのものが割れています。明確に反対しているアーティストもいますね。僕自身は稼ぎたいというよりも、実際にやってみてどんなものかを知りたい。実際に参加しないと、このムーブメントで何が起きているか分からないなと。とはいえ、最初は批判が怖かったですね。

仮想空間上に生まれるアートギャラリー
NFT専用の仮想空間ギャラリー「CryptoArtTown」

藤本:私は作品を作るよりも、どちらかというと買って楽しむ側です。そこで、作品を所有するだけでなく飾る場所が欲しいと思うようになり、CryptoArtTownというNFTギャラリーの空間を作りました。業界全体でもギャラリーを作って楽しむ方は多いですし、何より作品が飾られることで所有感が湧くんです。

絢斗:私は、Decentraland(ブロックチェーン技術を使った3D仮想世界)内でNFTギャラリーを設立しています。面白いのが「お隣さん」という概念ですね。例えば、隣のギャラリーがサイケデリックだと、自然と同じような雰囲気のギャラリーが集まったりする。なぜか傾向が似てきます。

土地の広さだけでなく、周囲のギャラリーの属性が自分のブランディングにつながる。実際に仮想世界上の土地を販売したことがギャラリーの特徴を生んでいるのかなと。

真鍋:僕たちもDecentralandでギャラリーを出そうかという話をしています。しかし、どこに出展すれば良いのか、土地の価格が上がったら売るべきかなど、色々考えてしまいますね。不動産的なセンスが問われてくる世界だと思います。

NFTは寄付と相性がいい

NFT Experimentで出品されるライゾマティクスの作品の一部は、株式会社GraconeによるNFTチャリティー活動「kizunaNFTチャリティープロジェクト」に参加している。藤本真衣氏によって、本プロジェクトの展望が語られた。

出展された「Rhizomatiks 007 “Rhizome - 05”」

藤本:今回「kizunaNFTチャリティープロジェクト」に、ライゾマティクスが出品してくださりました(注:オークションはすでに終了)。実はNFTと寄付はとても相性が良くて。例えば、既にCryptographという海外のプラットフォームでは、NFTのチャリティーオークションを多く扱っています。社会に還元したいアーティストやセレブリティがNFTの作品を出して、売上を寄付するシンプルな仕組みです。私も同様の取り組みをkizunaでやりたいと考えています。

NFTのチャリティーは、イーサリアムのアドレスから誰が参加したかわかります。なので、将来はお金で買えないNFTにこそ、価値がつくのではないかと絢斗と話しています。チャリティーに貢献した人に、お金では買えないものを送ることで喜びを提供したいなと。

真鍋:僕もkizunaの理念に共感して、作品を提供しました。藤本さんも仰っていたように、NFTは、購入者が所有していることを証明できます。特に初期の作品を手に入れた方には、将来何らかの還元が出来たらと考えています。

まだ僕らのプラットフォームは始まったばかりなので、焦らずコンスタントに作品を出し続けたいですね。

参加ハードルの高さが課題

イベントの後半では、株式会社Kyuzanの髙橋卓巳氏と小宮山凌平氏を迎えて、NFT Experiment上での落札の実演が行われた。また、実際にNFTを購入する際の注意事項、課題点などにも触れられた。

NFT Experimentの入札デモの様子

真鍋:イーサリアムはパブリックチェーンのため、資産状況が辿れてしまうという話があります。そのような類の注意事項が多い割に、どこかに分かりやすく情報がまとまっているわけではない。NFTを買う上で注意すべき点、課題点などがあれば教えてください。

髙橋:仰るとおりで、NFTを買う上で多くのハードルがあります。欲しいNFTがあって実際にプラットフォームを訪問しても、知らない世界へ飛ばされてしまう感覚は否めない。慣れない人からすると、怪しいサイトに飛ばされたと思うかもしれません。

ウォレットを作って自分で管理する行為、さらにそこからNFTを買う行為がとてもわかりにくいところが注意点、同時にプロダクトを作っていく上での現状の課題です。

絢斗:この課題について、インターネットの奥にイーサリアムという別の世界があるというたとえをすることがありますね。例えば、ARグラスをかけるとCGが見えるという話と同様、仮想通貨のウォレットを通してイーサリアムの世界が見えるようになるという話です。

個人的には、ARグラスが普及すれば、意外とブロックチェーンの概念が理解されやすいのかもしれないなと感じています。

所有者の体験向上が鍵となる

藤本:チャリティーが好きな人は、実はあまり見返りを求めない人が多いのですが、そういう人にも喜びを感じてもらえる世界観を作っていきたいと思います。例えば、購入者に証明書や賞状のようなものが渡せたらなと。もしくは先ほども話しましたが、NFTの所有者限定の空間を作ることも構想していますね。

真鍋:僕は物理空間が主戦場なので、NFTの情報が書き込まれたタグと身体が結びついたら面白いと感じています。DNAは既にやられてしまいましたが、生体データとの組み合わせ。あとは最近良く相談される内容でNFTとプロダクトとの連携。ウォレット機能を持ったディスプレイとか。そうすると、リアルワールドの人も新しい企画を生み出しやすいかもしれない。

絢斗:ブロックチェーンとRFIDを連動させたプロジェクトはすでに増えてきていますよね。また類似の技術ですが、NFCチップとブロックチェーンを絡めたプロジェクトも少しずつ増えている。

真鍋:ファッションやプロダクトの人もNFTに手を出したい気持ちはあると思います。しかし、彼らの舞台はリアルワールドなので、ファッションアイテムをARでどう合成するか、バーチャルワールドで着るにはどうしたら良いか、というような方向性になりがちです。本当はもっと他の取り入れ方をしたほうが良いんじゃないかな。

絢斗:例えば、NFTの所有者がリアルのイベントで投票できる仕組みは良いかもしれません。物理空間との関わりも持てますし、簡単に始められそうです。

藤本:Jenny Metaverse DAOというプロジェクトがあります。アーティストのNFTをJenny Metaverse DAOを通じて細分化し、ガバナンス機能をもたせたトークンを配るといったことが可能です。NFTのプラットフォームも、ブロックチェーンならではの使い方が出始めていて面白いです。参加型というだけでなく、ブロックチェーンを通じて透明性も守られているんです。

髙橋:いま多くの人が、何をNFTにしてどこで売れるかという話に夢中になっています。今後は、購入者やコミュニティへの還元方法が課題の中心になるでしょう。

それに伴って、NFTでできるアクションをどれだけ多く用意するかが鍵だと思っています。VRやAR上で動かせる自由度が高いコンテンツほどNFTの所有感を体感しやすいですし、第三者が見ても分かりやすい。そういう意味でVRやAR上のモデルとNFTは相性が良いでしょう。

また、真鍋さんがおっしゃるとおり、物理空間でハードウェアを通じた所有感や、他者から見た分かりやすさをデザインしていくことも重要です。

真鍋:物理的な物として存在することで、ハードウェアとしての仕上がりやクオリティも大切になってきそうですね。

NFT業界の未来

イベントの終盤ではKyuzanの小宮山凌平氏、髙橋卓巳氏より、NFT業界の未来について語られた。

小宮山凌平

小宮山:現状、NFTではイーサリアム由来の規格、ERC721がデファクトです。しかし、この状況も長く続くとは限りません。例えば、NFTの二次流通でロイヤリティを取りたいと考えたときに、ERC721という規格だとショップをまたぐとロイヤリティが取れません。また、NFTをレンタルする機能も実装が大変という問題があるんですよね。

こういった問題は、ERC721の規格に少し機能を追加すれば解決できるはずです。今後、イーサリアム上で、ERC721を使わない大きなプラットフォームやパブリッシャーが出てくれば、そこで使われている規格が一気に広がっていく可能性もある。

藤本:プラットフォームをまたいだ時にロイヤリティが取れないのは本当に大きな課題です。一度行った寄付がずっと生き続けることのほうが好ましいので、もしこの点が改善されればkizunaのプロジェクトでも活かせそうです。

絢斗:CryptographがERC2665という規格を提案しているので、それをいろんなプラットフォームが拡張していけば、案外実装は早いかもしれませんね。

髙橋:小宮山が規格の話をしたので、私は業界内のプレイヤーの話をします。最近、OpenSeaやSuperRareのようなジェネラルなプラットフォームが業界内の立ち位置を確立しにいく姿をよく見かけます。特にアートの領域では、ギャラリーやキュレーションの役割をプラットフォームに取り入れるのが大きな方向性ですね。

また、マーケットプレイスとパブリッシャーが対立しているように思われがちですが、前者も特定の領域に特化し始めていますし、後者もオーディエンスを囲い込みに行っています。両者の共通点は、特定のコミュニティを育ててNFTの価値が中長期的に上がっていく仕組みを作っていく姿勢ですね。

僕たちKyuzanとしては、パブリッシャーとして日本のコンテンツやブランドがブロックチェーン上に新しい価値を作っていく動きを支援していきたいです。

INFORMATION

ライゾマティクス、Perfume発のNFTアートを販売

ライゾマティクス独自のNFTアートのマーケットプレイス「NFT Experiment」にて、6月11日よりPerfume初のNFTアートである「Imaginary Museum “Time Warp” 」を販売開始した。

作品名:「Imaginary Museum “Time Warp” 」(イマジナリーミュージアム “タイムワープ” )
販売日:6月11日(金)21:00〜 ※初回作品は 18日(金)21:00に販売終了。以降、NFTアートを随時販売。
販売場所: NFT Experiment https://nft.rhizomatiks.com/ 

 

6月18日(金)20:00〜24:00
ライゾマティクス主宰のイベント「Staying Tokyo」で再びNFTアートを特集する。
https://www.twitch.tv/rhizomatiks

 

 

CREDIT

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TEXT BY HIDETO MIZUTANI
1994年、東京生まれ。編集者/Webディレクター。慶應義塾大学卒業後、医療系スタートアップの編集・開発などを経て現職。建築・デザイン領域を中心にコンテンツ制作に関わる活動を行っている。大阪の社会主義的な風景を映した写真集『OSAKAN SOCIALISM』を企画・発行。 https://h1den.com

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