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2020.03.10

国際サイボーグ倫理委員会宣言! サイボーグ企業MELTIN粕谷昌宏が語る人類進化への道

TEXT BY MASAHIRO KASUYA

人間のサイボーグ化は夢物語ではなくなった。それを裏付けるのが、日本屈指のサイボーグ技術開発企業MELTINの生み出す先端テクノロジーだ。代表の粕谷昌宏は、人間の身体が機械と同等なものとなったとき、人間の持つ創造性が最大限に発揮される未来を提示する。そのとき、新たに生まれる価値観とは何か?  技術は人間を幸せにするのか?  100年先の人類の倫理を問う、「国際サイボーグ倫理委員会」が今年始動する。

1.サイボーグへのイントロダクション

メルティンMMI(以下MELTIN)は、サイボーグ技術を研究開発し事業化するためのベンチャー企業である。少し前まで未来のように聞こえたロボットやAIは近年実際の生活に入り込んできたが、サイボーグはまだ実生活には馴染みのない言葉かと思う。サイボーグ技術が何であるか、およびそれが我々の生活に何をもたらすかについてお話したいと思う。

サイボーグ技術とは

「サイボーグ」は様々なSFで取り上げられてきたため、各個人が様々なイメージを持つなか「身体の一部が人工的なもので構成されている」という共通認識があるのではないだろうか。MELTINでのサイボーグ技術は、身体の一部をロボット技術などに代表される人工物で構成することに加え、生体信号の解析技術から構成されている。

生体信号は人の体を流れる電気信号で、人の体の各機能を制御している。この電気信号が脳から出て筋肉に到達すれば体が動き、何かを見た・聴いた・触れた場合、その刺激がこの電気信号に変換され、脳に送られることによって人は外界を認識している。

人類の限界とMELTINのビジョン

もともと人類は知能により自ら文明を築き発展してきたが、この発展は今後滞る可能性が高い。例えばコンピュータは高速に進化を遂げているが、これを使うために人は10本の指をせわしなく動かさなくてはならない。今後さらにコンピュータなどの道具の性能が向上し、これまでにない新たな道具が発明されたとしても、操作する人間の身体が動く速度は変わっていないため道具を使いこなせず、自分の身体の性能そのものがボトルネックになる世界が訪れてしまう。これを打ち破り、リニアに人類が発展し続けるためには、自分自身の性能を変えていく必要がある。

人類は非常にすばらしい想像力からくる創造性を持っていながら、それはまだ最大限発揮されていない。だからこそ、サイボーグ技術によって身体の性能によるボトルネックを取り除き、創造性​を最大限発揮できるような世界を創るのがMELTINのビジョンである。

2. サイボーグ時代のライフスタイル

サイボーグ技術が実用化された社会はどんなものであろうか? まず大きな変化として、高齢者や障害者を含めたすべての人が生産可能人口になることが挙げられる。モチベーションと能力さえあれば、年齢や健康状態に関わらず自分の望むように生きることができる。

機械の身体が自分の身体と遜色ないものになったとき、遠隔地に置いたもうひとつの体をインターネット経由で操作すれば、場所に囚われる必要もなくなる。通勤ラッシュは解消され、住環境や人口密度の問題の解決など様々な変化が起こり、それに伴い国家の形態も大きく変化する可能性がある。例えば、物理的な場所に囚われない世界となるため、自分の受けたい社会保障サービスを提供する国家を選択し、税金を収めるような国家のプロバイダー化である。

株式会社メルティンMMI 代表取締役・粕谷昌宏

さらには、教育や技術の伝承・発展も大きく変わると考えられる。単純な知識が脳にダウンロードすることができるようになると、教育は基本的な知識を教えるものから知識をどう使っていくのか、その応用力へと関心が変化する。

表現の幅にも大きな変化が訪れる可能性がある。例えば、頭の中にあるイメージを映像にするには、カメラなど様々な機材を用意し撮影を行い、編集をして仕上げていく。しかし、頭の中にあるイメージを直接出力することができれば、より早く効果的に制作活動を行うことができる。さらに、基本的に表現やアートは、アーティストの視点や内面を伝えるために、鑑賞者の五感をいかに刺激するかであるが、サイボーグ技術が発展すれば、五感以上の感覚を感じさせることや、アーティストの記憶や感情そのものを展示・体験する形態もありうる。

こういった社会の変化は個人の創造性の最大化にとどまらず、人と人とのコミュニケーションに発展し、より他者を広く深く理解することにつながる。それにより無用な争いや戦争なども減少し、個を超えた連携により人類全体の創造性の最大化につながると考えている。MELTINが目指す創造性の最大化が「人類」をターゲットにしているのは、ここに理由がある。

3. 国際サイボーグ倫理委員会

サイボーグ技術がもたらす変化について触れてきたが、サイボーグ技術は本当に人類を幸せにするのであろうか? サイボーグ技術の持つ影響力を適切に理解し、どのようなルールに則り実用化していかなければならないかについては膨大な議論を要する。

サイボーグ技術は人類の創造性を最大化するための技術であるが、例えば他者との意思伝達方法が脳を介した直接的なものになったとき、多数が同じような思考に収束し、創造性を失ってしまっては本末転倒である。このような新しい技術は倫理とは切っても切れない密接な関係がある。そのため、国際サイボーグ倫理委員会(以下GCEC)を立ち上げ、技術開発と同時に倫理的・文化的な側面についても検討を進め、開発にもフィードバックするという活動を開始している。

様々な角度や立場から未来をシミュレーションし、人類が正しい方向に向かうよう補助するのがGCECなのである。

INFORMATION
『人は明日どう生きるのかーー未来像の更新』(NTT出版)

『人は明日どう生きるのかーー未来像の更新』(NTT出版)

筆者・粕谷昌宏が参加した、森ビル主催シンポジウム「Innovative City Forum2019」の論集が発売。生命は進化するのか、資本主義と幸福、情報-建築-都市の未来、都市は消滅するのか、愛とアルゴリズムなど、2020年代のテーマが集結。『Bound Baw』編集長・塚田有那は一部セッションのモデレーターとして参加した。

② 国際サイボーグ倫理委員会キックオフイベント
日時:2020年4月11日(土) 13:00~18:30
配信:YouTube LIVE(限定公開)
URL:https://www.facebook.com/events/649512588965302/

◆第一部『アバター社会の実現に向けて -創業の経緯と開発の今』
登壇者:
松井 健 氏 (Mira Robotics株式会社 代表取締役CEO)
吉藤 オリィ 氏 (株式会社オリィ研究所 代表取締役所長)
粕谷 昌宏 氏 (株式会社メルティンMMI 代表取締役)

◆第二部『未来を描く -サイボーグ社会における〇〇』
パネリスト:
暦本 純一 氏 (東京大学情報学環教授/ソニーコンピュータサイエンス研究所フェロー・副所長)
南澤 孝太 氏 (慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授)
粕谷 昌宏 氏 (株式会社メルティンMMI 代表取締役)

 

CREDIT

190621 kasuyameltin s
TEXT BY MASAHIRO KASUYA
1988年生まれ。創造性の追求において身体がボトルネックとなっていることに1991年に気づき、以来解決策を追い求めてきた。1998年に医療と工学の融合分野が解決策となることを予想し、2002年からサイボーグ技術の研究を開始する。 2006年に早稲田大学理工学部に入学、2007年に初めての論文を執筆。2011年にはロボット分野で活躍した35歳未満の研究者に贈られる日本ロボット学会研究奨励賞を受賞。2012年には、VR空間内の体と現実の体を生体信号により接続しシンクロさせる手法を開発し、電気通信大学大学院に移動。 日本学術振興会特別研究員を経て2013年にサイボーグ技術を実用化する株式会社メルティンMMIを創業。2016年にはロボット工学と人工知能工学で博士号を取得、2017年に代表取締役に就任。回路設計から機構設計、プログラミングやネットワークシステム構築と幅広く開発をカバーする。2018年にはForbesより世界の注目すべきアジアの30人として選出された。

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「Bound Baw」は大阪芸術大学アートサイエンス学科がプロデュースする新しいWebマガジンです。
世界中のアートサイエンスの情報をアーカイブしながら、異分野間の知見とビジョンを共有することをテーマに2016年7月に運営を開始しました。ここから、未来を拡張していくための様々な問いや可能性を発掘していきます。
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それは、この多様で複雑な時代に「未来」をかたちづくる、新たな思考の箱船です。
そして、未知の航海に乗り出す次世代クリエイターのためのスコープとして、アートやデザインなどの表現・文化の視点と、サイエンスやテクノロジーの視点を融合するメディア「バウンド・バウ」が誕生。境界を軽やかに飛び越えた、冒険的でクリエイティブな旅へと誘います。

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