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2023.08.23

未知の身体イメージとともに遊ぶ。「わたしのからだは心になる?展」が東京の新アートスペース「SusHi Tech Square」にて開催

TEXT BY NANAMI SUDO

環境課題による災害や経済情勢の変化など、予測不可能な現代の都市において、次世代に向けたサステナブルなコンセプトを発信する東京都の取り組みから、有楽町に新たなスペース「SusHi Tech Square」が誕生した。そこでは、アートとテクノロジーを触媒とし、常識や固定観念をくつがえす展覧会シリーズ「PASs(Playground for Alternative Seeds)=新たな種を育む思考の遊び場」が始動する。こけら落としとなる展覧会「わたしのからだは心になる?」展(8月30日〜11月19日)では、8組のクリエイターがメディアアートとテクノロジーを駆使して、ままならない現代の身体のありようを鋭く問いかける。

アートとテクノロジーを通じて、自由な思考を解放する

東京都は、世界共通の都市課題に対して、最先端のテクノロジーを活用して「持続可能な新しい価値」を創出する “Sustainable High City Tech Tokyo = SusHi Tech Tokyo” というコンセプトを提言し、千代田区丸の内にその取り組みの一環となる「SusHi Tech Square」を2023年8月30日(水)にオープンする。

この施設オープンと同時に、アートとテクノロジーから自由な発想を促し、未来の価値をつくる創発拠点として、展覧会シリーズ「PASs(Playground for Alternative Seeds)=新たな種を育む思考の遊び場」が1階フロアに誕生。この場で感じた疑問や思考が、未来の「種」となって世界各地に広がり、社会のなかで萌芽することを目指し、メディアアートやテクノロジーの展示を通じて、未来を考え行動することを楽しむ、はじめの一歩としての鑑賞体験を提供する。

第1回目となる展覧会「わたしのからだは心になる?」展では、「身体」のありようをテーマに、VRやAIなどの普及によって、テクノロジーとの境界が曖昧になる身体を捉え直し、内なるイメージを引き出すような体験をすることができる。

本展キュレーターは当メディア「Bound Baw」編集長の塚田有那を迎え、8組のアーティスト・研究者らが多様な身体のイメージを問いかける。

独自の視点で「身体」を探究するアーティスト・研究者が集結
神楽岡久美《Extended Finger.》2019 Photo by Koki Urano

今回の出展作家には、ノガミカツキや花形槙ら気鋭の現代アーティストに加え、テクノロジーを駆使しながら身体や感情などのインタラクティブな領域を開拓する研究者らも集った。それまでの自分の身体に対する常識や固定観念をくつがえし、固有のものとして捉えていた身体の広がりや、社会との関わりを意識するような作品群が展示される。

テクノロジーや資本主義社会によって型取られた人間の在りように着目し、身体と非身体のあいだで実践的なパフォーマンスを行う花形槙は、存在代行サービス《Uber Existence》にて、他者の存在の身代わりとなって自分の体を行使するという架空のシステムをつくり、身体の主体性はどこにあるかを問いかける。

花形槙《Uber Existence》Photo by Taro Karibe

アルスエレクトロニカやWROビエンナーレなど、海外での展示経験も多数あるノガミカツキは、UVプリント技術を用いて、石や植物に自身の顔写真データをプリントする《Image Cemetery》《Image Planting》シリーズなど、デジタルイメージを通じて自己を自然物に憑依させ、身体の時間軸を再構築している。今回はVR世界に没入する自分自身のアバターを用いて、VR空間で侵食される身体感覚に抵抗を試みるパフォーマンス型作品《仮想支配》を披露する。

「⼈⼯⽣命 (ALife)」研究の社会応⽤に挑むグループ「Alternative Machine」は、最適化や効率化ではなく、自律性や適応性、愛情や親しみ、存在感など、⽣命的な新たなテクノロジーのあり⽅を探求する研究者集団。研究開発と同時にアート活動も行っており、今回は都内に生息する街路樹や樹木に着目し、新たな生態系ネットワークの構築を目指した実験作品《Enabling Relations》を展示期間中に実施する。

Group + Alternative Machine《Tuning for Sanctuaries》2023

「Material Experience Design」というコンセプトを掲げ、UIへの接続を見据え、デジタルファブリケーションやバイオテクノロジーなどの知見を積極的に取り入れているインタラクションデザイン研究者の筧康明は、プログラマーの赤塚大典、デザイナーの吉川義盛とユニットを組み本展に参加。

また、「からだの錯覚」をテーマに探究する小鷹研究室as 注文の多いからだの錯覚の研究室は、視点をずらすことで自分の体がモノのひとつになったかのような、不可思議な身体体験をお届けする。

筧康明+赤塚大典+藤井樹里+吉川義盛+伊達亘+reckhahn《Air on Air》2020
Photo by Yasuaki Kakehi
小鷹研究室as 注文の多いからだの錯覚の研究室《ボディジェクト指向#03》

他にも、インタラクションデザイン研究者のソンヨンア、バーチャルリアリティ・認知科学研究者の鳴海拓志、ソフトロボット研究者の新山龍馬、エクスペリエンスデザイナーの勢井彩華による共同研究チームも名を連ね、あらゆる角度から身体性における価値観を更新するようなテクノロジーと出会えるはずだ。

​​ソンヨンア+鳴海拓志+新山龍馬《Puff me up!》2022
アートコミュニケーターが常駐する空間

PASsでは、展示を通じた思考体験をさらに一歩先へ深めるための仕掛けがなされている。会場中央の「プレイグラウンド」という空間では、作品鑑賞で生まれた気づきや疑問を誰かと対話したり、ひと息ついたりと、余白のフリースペースとして自由に活用できるようになっている。

また、会場には鑑賞者の解釈や理解をサポートするアートコミュニケーターが常駐し、気軽に自身の思考を打ち明けられるような窓口として鑑賞者と対話を行う。アートやテクノロジーに馴染みのない方でも、作品の感想を言い合ったり、鑑賞中に感じた素朴な疑問を投げかけられたりできるような雰囲気づくりが、何度も繰り返し考え、実践するための架け橋となるだろう。会期中毎日実施される予定の鑑賞ツアー(予約不要)も、新たな視点を獲得するきっかけとして、利用してみてはいかがだろうか。

開催概要

わたしのからだは心になる?展

会期: 2023年8月30日(水)〜11月19日(日)
休業日: 月曜日 (ただし祝日の9月18日、10月9日は開場)、9月19日、10月10日
会場時間: 平日 11:00~21:00(最終入場20:30)、土休日 10:00~19:00(最終入場18:30)
住所: 〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-8-3 SusHi Tech Square 1F
URL: https://sushitech-real.metro.tokyo.lg.jp/first/
入場料: 無料
入場方法: 個人は予約優先(当日枠あり)、団体は予約制
     ※予約方法は後日公式サイトにてご案内します。

 

CREDIT

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TEXT BY NANAMI SUDO
栃木県出身、1998年生まれ。2020年早稲田大学文化構想学部卒業後、フリーランス編集者に。主にWEBサイトやイベントのコンテンツ企画・制作・広報に携わっている。2023年よりWhatever inc.でProject Managerとしても活動中。

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