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2020.07.31
バイオアートが問いかける生命倫理とは? 表参道GYRE「ヒストポリス─絶滅と再生─」展
TEXT BY NANAMI SUDO
2020年6月8日(月)~9月27日(日)の間、表参道GYREにて開催されるバイオアートの展覧会「ヒストポリス─絶滅と再生─」展。高度技術の発展に伴う人類の絶滅の危機といかに向き合うか、生命への倫理はアップデートされるのか。6組のアーティストから様々な問いかけが提唱される。
「ヒストポリス」とは、“生命を宿す都市”という意味を持ち、「ネクロポリス(死者の都市)」に相対する言葉である。本展を監修するGYLEギャラリーディレクターの飯田高誉氏は、ヒストポリス展の開催に寄せて、社会学者のウルリッヒ・ベックが警告する「危険社会」を取り上げる。
AIやゲノム編集、原発などの科学技術は、人類の様々な課題を解決するツールであると同時に、複雑な問題を発生させるブラックボックスでもある。新型コロナウイルスの感染蔓延が不安要素として立ちはだかるこの状況下において、作品が示唆するメッセージとの交差点に人類の絶滅と再生の問題を考えることができるかもしれない。
ゲストキュレーターには、2018年同会場にて『2018年のフランケンシュタイン バイオアートにみる科学と芸術と社会のいま』を手掛けた金沢21世紀美術館の高橋洋介氏を迎えた。やくしまるえつこやsynfluxら6組の新鋭アーティストとともに、これからの科学とアートが融合する表現を魅せる。
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やくしまるえつこが“人類滅亡後の音楽”をコンセプトに2016年からスタートした、新しい音楽の形を探るプロジェクト『わたしは人類』。森美術館「未来と芸術展」への出展も記憶に新しい。微生物のDNAを基に制作した楽曲をDNA配列に変換し、その楽曲情報をDNAに組み込んだ遺伝子組換え微生物という、音楽とDNAを循環するようなバイオテクノロジーを駆使した作品。
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ファッションが持つ思索的な創造性を探求する、スペキュラティヴ・ファッションという地位を確立しつつあるsynfluxの新作は、機械学習との共創ともいえる実験的なテキスタイル。
Google上に無数に漂う2万5千枚の動物の画像データを、機械学習アルゴリズムに学習させAI生成した「架空の動物(Imaginary Animals)」のデータ群を、ジャガードに織り込んでいる。
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防弾チョッキで防ぐことのできる、ライフルの弾の重量と速度にちなんで命名された人工皮膚『2.6g329m/s』は、“防弾皮膚”とも称される。オランダのバイオテクノロジー企業Inspidere B.V.のCEOジャリラ=エッサイディは、ヤギのミルクとカイコを材料とし、鉄の5倍の強度であるクモの遺伝子を組み換んだ糸を、人間の皮膚細胞と組み合わせて、人工皮膚を作った。
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主にバイオテクノロジーをテーマに,自然・社会・文化環境と人々の意識との関係を探索するリサーチ・フレームワークBCLは、子宮頸がんで亡くなったアメリカの女性Henrietta Lacksさんに由来する『©Hela細胞』を出展。1951年に世界で初めて樹立されたヒト培養細胞株で、学問としてのウイルス学成立のきっかけにもなっている。
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イメージング技術、組織工学を専門とする研究者でもあるアーティストのガイ・ベン=アリの映像作品『ブリコラージュ』は、培養した人間の心筋細胞とシルク、そして血液で構成するキネティック・アートによって、倫理的な議論を巻き起こす作品となっている。
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異形のグアニン四重鎖構造を模した立体作品『ジー クアドロプレックス(タイプA)』と、歴代の日本の天皇の顔を平均化した『エンペラー(少年A)』を出展するのは須賀悠介。SFや科学哲学などを参照し、立体作品をベースに、日用品を用いたオブジェや3DCGの映像作品など、様々な素材からなる新奇な作品を制作している。
展覧会情報
ヒストポリス─絶滅と再生─展
会期:2020年6月8日(月)〜2020年9月27日(日)
会場:GYRE GALLERY
入場料:無料
https://gyre-omotesando.com/artandgallery/histopolis/