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2022.02.03

デジタルのその先を見据える、20代のヴィジュアルアーティスト3名の制作の裏側「MUTEK.JP 2021」レポート

TEXT BY NANAMI SUDO

電子音楽とデジタルアートの祭典「MUTEK.JP」が2021年12月8日〜12月12日の5日間にわたって開催された。今回、渋谷ストリームホールで行われた「Nocturne」プログラムに出演した、気鋭のUnder25のアーティスト、Kaori Yasunaga、Yuki Ishida、そしてJACKSON kakiの3名にフォーカス。彼らの創作活動のルーツから、独自の表現方法のバックグラウンドについて伺った。そこからは、メディアの枠組みを常に問い直し、デジタルアートの可能性の更新を試みる彼らの姿を感じ取ることができた。

1999年にカナダ・モントリオールの地でスタートし、現在ではその規模を世界7都市に拡大して開催されている、最先端の電子音楽とデジタルアートの祭典「MUTEK」。唯一のアジア拠点・日本で行われる「MUTEK.JP」も2021年で6年目を迎えた。新型コロナウイルス流行のため、前年はオンラインを中心に実施されたが、今回は日本科学未来館ドームシアター、LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)、そして渋谷ストリームホールの計3会場のオフラインステージとオンラインプログラムが設けられ、充実のラインナップとなった。

今回は、音楽家・原摩利彦、パフォーマンスアート集団・Antibodies Collective、サウンドアーティスト・Saskiaなど音楽/アートシーンの第一線で活躍する豪華な顔ぶれの中、「MUTEK」初参加となる若い世代のアーティストたちの存在にも際立っていた。オリエンタルな印象を受けるアニメーションを制作し、海外にも拠点を置くKaori Yasunaga、現在BACKSPACE Productions Inc. に所属し、数多くのイベントにてVJを担当するYuki Ishida、クラブカルチャーをルーツに、ゲームエンジンを使った多層空間における体験を追求するJACKSON kakiなどだ。

そこで、彼らは最先端技術とアートに対してどのような考えをもって向き合っているのか、そこに求めているものは何なのか気になった。彼らの活動が多くの学生にとっての制作のきっかけやインスピレーションとなることを願ってインタビューを敢行した。

国際的にも評価される、過去と未来のモチーフを紡ぎ合わせるアニメーション作家|Kaori Yasunaga

 

Kaori Yasunaga

 

1998年東京生まれ。2021年ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン卒業。2020年には「映像作家100人」にノミネートし、幻のような日本の姿を描いた作品『浮寝島』ではローマ国際短編映画祭、ニューヨーク・インディペンデント・シネマ・アワード、ニューウェーブ短編映画祭(ドイツ・ミュンヘン)にて最優秀アニメーション賞を受賞し、ほか受賞歴多数。「MUTEK.JP」ではDJ・Lemnaとのコラボレーションにて、VJとして出演した。

まず、映像制作を始めたきっかけについて教えてください。

これまでに色々なメディアを使って創作活動をしてきましたが、最初は実写映画を撮っていました。映画は詩や絵、音楽など、あらゆる文化に総合的に携われるので、物心ついた時から自然と映画がつくりたいと思っていたんです。大学に進んでからは、アニメーションを勉強する機会があり、アニメーション表現も面白いなと感じるようになりました。

アメリカのロードアイランド・スクール・オブ・デザインに行かれていますが、具体的にどのような勉強をされたのですか?

入学後最初の1年目は芸術の基礎を勉強するカリキュラムがあり、その後に自分の専攻を選択しました。私の選んだ学科は、アートの視点から映像を勉強するようなところで、フィルム、アニメーション、ビデオアートなど、全ジャンルを勉強することになるんです。自分にとってはそのすべてが興味深かったので、ジャンルに捉われず、あらゆる要素を混ぜ合わせるような作風になっていきました。

制作に使用するツールは、作品によって大幅に変えています。初期のアニメーション制作では、ストップモーションやセル画など、割とアナログな方法を使っていたんですけれど、最近ではAdobeのAfter EffectsやIllustratorなどが多いですね。今回のMUTEK出演にあたっては、3DCGを使ったりもしてみました。

安永さんの代表作とも言える『浮寝島』についても教えてください。

『浮寝島』というタイトルは、万葉集に登場する「浮寝鳥(うきねどり)」という季語をもじっています。私は7年間アメリカで生活していたので、遠い場所から見た祖国・日本のイメージが頭の中で醸成され、私にとってはそれが「浮いたまま眠っている島」になっていきました。私のイメージする日本の記憶を、目に見える何らかのかたちで留めておきたいという思いから、この作品をつくりました。日本がルーツではない人が観ると、すごく日本的に感じると言ってもらうことが多いです。

最初にコンセプトを決めてから作品を制作されるのでしょうか。

私はナラティブなアプローチを先に考えるというよりも、実験的にさまざまな物事や人をつなげていって、結果としてストーリーが形成されていくような作品作りがしたいと思っています。

『浮寝島』も現代の日本だけではなく、いまではもう失われてしまった古来の文化からもインスピレーションを受けています。本や古い映画、俳句などを通して日本という国を見た時に、昔ながらの日本も作品や人々の心の中に生き続けているんだという実感が持てます。また、私は幼少期から祖父母に育てられていたこともあって、その頃の古い家の記憶だったり、祖父母からの話だったりといったモチーフが交わって、時の流れが止まった幻のような日本の姿が形成されていったのかもしれません。

今回のMUTEKの出演はプロデューサーのLemnaさんとのコラボレーションでしたが、普段の創作活動と比べてみていかがでしたか?

いつもは音楽も自分でつくりますし、一人で完結することが多いので、誰かの音楽のために映像をつくるという試みは初めてでした。VJにトライするのも初めてで、たくさん練習しましたね。制作のプロセスも普段とはまったく異なり、Lemnaさんから依頼されたストーリーボードに合わせながらビジュアルに落とし込んでいきました。音楽を聴いてみて、ストーリー性が強く多様な音が混ざっていて、ある種の映画のような印象を受けたので、観る人にもまるで映画のような鑑賞体験をしてもらえるよう、一つひとつの音に耳を傾けて、それを表現していきました。

安永さんの映像は印象派絵画のような淡く儚い景色に奥行きが感じられて、VRによくある3D表現とは異なり面白かったです。初めて作られたという3DCGはいかがでしたか?

 

MUTEK.JP / Photo: Shigeo Gomi

冒頭のシーンでは実際にロケーションで撮影した映像を使いました。そこから森へ入ると3DCGに変化していき、森の中を進んでいくシーンも全部3Dです。森から抜けた後、川の向こう岸へ行くところもそうですね。今回一番難しかったのは、普段はカメラが固定されたショットで、あまり背景は動かないような作品を作るのですが、今回は森の中を歩いて川を渡っていくというように、背景が速く進んでいくように見せたことです。一枚の背景を作るのにものすごく時間が掛かって、さらにその中をナビゲートして動いていくようにするのには苦労しました。

映像に登場した灯火にはどんな意味が込められていたのでしょうか。

あの灯火は、Lemnaさんからモチーフにしてほしいというお話があった「狐火」を象徴しています。「大禍時(おおまがとき/逢魔が時)」という、昼と夜が移り変わる黄昏時に魔物に遭遇すると言われる時間が全体のテーマとしてあったので、日常の風景から少しおどろおどろしい雰囲気へと転換していくような映像になりました。私は基本的にレイヤーをたくさん重ねて制作することが多いので、今回もイメージの境界線をぼかしていくように意識しながら、レイヤーをずらして配置することで表現しました。

今後の展望はありますか?

映像をつくり始めた頃は、デジタル表現よりも古いものに興味があり、実写撮影時も古いフィルムカメラを使っていたりしたんですけれど、やっぱり私は現代に生きているわけだから、現在から過去を振り返るだけでなく、未来についても考えながら、過去と未来の両方を融合するような作品をつくりたいと考えるようになりました。

いまではテクノロジーを使って古いものを表現することにも関心があり、積極的に新しい映像技術にも触れたいと思っています。昨年は『浮寝島』の制作におよそ1年をかけたので、すぐに新たな作品をつくるより、いまは色々なツールを使って実験したいです。日本に帰ってきてまだ間もない状態なので、久しぶりの日本の生活の中で吸収したものを創作に取り入れたいと考えています。

リアルタイムの制約の中でいかに「らしくない」見せ方ができるか|Yuki Ishida

 

Yuki Ishida

 

1996年生まれのビジュアルアーティスト。リアルタイムレンダリングを用いた表現手法を軸にアーティストのライブステージ演出、MV、VJ、インスタレーション、ARなど多岐に渡る映像制作を行う。現在BACKSPACE Productions Inc.所属。「MUTEK.JP」ではビジュアルプログラミングのワークショップを開催するプロジェクト「TDSW」キュレーションのプログラムにてDJ dhamaとコラボレーションした。

MUTEK.JP / Photo: Shigeo Gomi

BACKSPACE Productionsでは、映像だけで完結するのではなく、音楽やイベントなどの主旨に沿って、複合的に見せることが前提のコンテンツづくりが多いでのはないかと思います。まずは普段行っている制作について教えてください。

イベントや展示、アーティストのライブなどのクライアントに映像を提供しています。映像単体で完結せず、映像の仕組みから提案することが多いです。前提として、映像が音楽にマッチしていなければならないという条件は必ずあります。音楽を聴いて、ここで盛り上げようと自分で考えて、自由演技的に表現する場合もあれば、相手からの細かい指示をいただいてつくるときもあります。

技術的なところでは、基本的にTouchDesinerを使ってリアルタイムでデータをもらったり、演出をしてレンダリングをするのが得意です。その前の仕込みとして、BlenderやHoudiniなど別のCGソフトを補助的に使用しています。

映像制作を始めたきっかけは?

大学3年時に情報学者のドミニク・チェンさんの講義を受けて、漠然とメディアアートに興味を持ちましたが、その時に技術的な部分でつまずくというコンプレックスを感じました。そこから色々なツールをさわるようになり、自分にはTouchDesignerが合っているなと分かってきました。文系の自分にはできないだろうと諦めていた部分もあったけれど、ドミニクさんの批評と実践を交えた手法に感銘を受けて、自分でもつくってみることに挑戦できました。それから、HEXPIXELSのパフォーマンスを2018年のMUTEKで観て、TouchDesignerでここまでできるんだと驚きましたし、ビジュアルも洗練されていて素直にかっこいいと感じました。そこから2020年に、HEXPIXLSの比嘉了さんのいるプロダクションBACKSPACEに入社していまに至ります。

美術大学ではない環境下で、技術をどうやって学んだのでしょうか?

最初に受けたのは、TOWER RECORDが運営している「タワーアカデミー」というTouchDesignerを使ったVJの講習です。それから、ワークショップや東京藝術大学のHEXPIXELSの比嘉さんの授業に参加しながら学んでいきました。ワークショップは、今回のMUTEKにもキュレーションしていただいた「TDSW(Tokyo Developers Study Weekend)」というビジュアルプログラミングのコミュニティが主催しているものです。初歩的な内容から発展的な内容までを幅広く扱っており、基礎的な部分はYouTubeで無料の解説動画が日本語で公開されているので、初心者の方が学ぶにはとてもおすすめです。2、3年前まではまだ日本語でのチュートリアルは少なかったのですが、いまは充実していると思います。

今回、どのような経緯でdhrmaさんとコラボレーションをすることになったのですか?

ワークショップ参加時からお世話になっているTDSWから選んでいただき、自分のMUTEK出演が決まりました。今回のパフォーマンスに向けて、少しスローテンポで、重さのあるヒップホップを経由した音楽を探しており、dhrmaさんのスタイルがぴったりだと思いました。dhamaさんは兵庫在住なので、事前にセットリストをもらい、オンラインでやり取りしながら、公演直前までは一度も合わせずに各自で準備しました。全体の音楽の構成を聴き取って、シナリオ制作に使われるようなドラマカーブ(横軸で音楽のテンションを折れ線グラフのように図式化したもの)を作成しながら映像を組み立てていきましたね。

映像について、風船など、様々なモチーフが登場しましたが、テーマを教えてください。

MUTEK.JP / Photo: Shigeo Gomi

今回のルールとして、ヒト型を出さないということはあらかじめ決めていました。「リミナルスペース」という概念なのですが、ヒトがいないけど何か気配のようなものを感じさせる、奇妙な雰囲気をコンセプトにしました。

また、カメラワークと質感にもこだわりました。iPadの仮想カメラやBlenderで事前に仕込んだカメラデータをTouchDesigner上で再生することで、生っぽい質感が出せるように意識しました。MUTEKを観に来る人たちの中には、同じようにツールをさわって何かをつくられている方もたくさんいると思うので、そのような目の肥えた人たちから見ても、TouchDesigner独特の質感ではない風合いが出せるようにすることを目標に、カラーグレーディングやカメラワークなどを調整しました。

cf.リミナルスペース
 

MUTEKでの公演を終えて、心境はいかがですか?

最初に影響を受けたHEXPIXELSと同じMUTEKの舞台に立てたことは自分のキャリアにとってひとつの契機になりました。VJを本格的に始めてから丁度コロナ禍に突入してしまい、配信イベントが多かったので、今回のような有観客の機会が持てたことは楽しかったです。

今後のVJでは、リアルタイムだからこその技術的な制約がある中で、出力されるビジュアルの可能性をどこまで広げられるのか試していきたいです。プリレンダーの要素やツールの良いところを組み合わせたり、ツール自体から作ってみたりして、これをリアルタイムでどうやって実現しているんだろう、と驚いてもらえるようなビジュアルを極めていければと考えています。

MUTEK.JP / Photo: Shigeo Gomi
ゲームアートで仮想空間における身体性と「存在」を問い直す|JACKSON kaki

 

JACKSON kaki

 

DJ/アーティスト。3DCGを用いたVR/AR/映像表現を行う。学部生時代は社会学を専攻し、また自身の音楽活動によって培われた経験が、表象の根幹をなしている。2022年1月31日〜2月4日まで、渋谷のナイトクラブContact Tokyoにて、自身がキュレーション・出展する『Imaginary Line』を主催。「MUTEK.JP」では25歳以下のアーティストを対象に実施されたオープンコールにて選出され、パフォーマンス作品を発表した。

JACKSON kakiさんは以前ロックバンドやDJなど、音楽を中心とした活動をされていましたが、映像を使ったアート表現の世界と出会ったきっかけはなんだったんでしょうか?

元々クラブミュージックに興味があったのですが、ビジュアル表現に強く魅かれたのは、2017年のフジロック。Aphex TwinやDJのArcaが来日して出演していて、彼らの音楽以上にビジュアルに圧倒されることになりました。

Aphex TwinはWeirdcore、ArcaはJesse KandaがそれぞれVJを担当していて、形式に囚われない表現に「VJってこんな自由でいいんだ」と衝撃を受けたんです。例えばJesse Kandaは、漁師が釣った血まみれの魚が流れていく様子や、動物の出産など、かなり抽象度の高いモチーフをモンタージュ的に使っていました。それからすぐにビジュアルをつくってみようと思い立ち、独学で勉強を始めました。

普段はどのようなプロセスで制作をされていますか?

使用ツールの9割方はゲームエンジンのUnityです。オープンソースで使いやすく、現在のVRのシステムはUnityでできていることが多いですね。

最初は「NEWVIEW」というプロジェクトが主催のワークショップ「NEWVIEW SCHOOL」に学生インターンとして参加し、制作のイロハを学びました。最近は経験者も増えてきていますが、私が参加したときは自分も含め、初心者もたくさんいましたね。やる気さえあれば、VRをはじめ、映像技術について学び始めやすい環境に恵まれている時代だと思います。

ワークショップの中で、ご自身の手法をどのように確立させていきましたか?

ゲームはいわゆる娯楽的な消費物という印象が強かったのですが、ワークショップで芸術としてのゲームについて研究されている多摩美術大学専任講師/メディアアーティストの谷口暁彦さんに出会いました。それがターニングポイントとなって、ゲームというメディアの中にある記号やナラティブを芸術領域で捉え直すことができました。

それを受けて、大学では社会学を専攻していた自分ならばどのような表現ができるのかを考えて、まずは芸術にある歴史の流れを丁寧に作品に落とし込むのが一番かなと思い、メディアに関する技術の枠組みの基礎的なところから扱うことを直近2年間の活動ではかなり意識していました。

MUTEKでパフォーマンスされた『存在している』からも、メディアと身体の関係性におけるレイヤーの重厚さを色濃く感じられました。

MUTEK.JP / Photo: Shigeo Gomi

今回のMUTEKのパフォーマンスにはたくさんのレイヤーがあり、ゲームというレイヤーの中でインタラクションが発生し、それがオーディオビジュアルとなって遊ぶことができるというシステムになっています。

それだけであれば、必ずしも自分が操作する必要は無いけれど、加えて「演奏者・JACKSON kaki」という存在のレイヤーがあるのがポイントです。私が演奏することによって、コンテンツとリンクして、コンテンツの文脈の部分がより拡張され、ひとつの作品になっていきます。さらにもうひとつレイヤーがあるとしたら、第三者である鑑賞者や空間だと思います。今回の会場となったストリームホールは音が大きく反響し、プロジェクターで映像が映し出されるという映画館的な体験ができる場所だと認識していたので、それに合った没入体験を促すために、エクスペリメンタルな音などを取り入れました。

次にサウンドについてお伺いしたいのですが、従来の「音楽」というよりは、仮想空間内で発生する物理的な音で構成されていて、予測不能なところが印象深かったです。

現実でも手を叩けば、その衝突によって音の振動が発生して相手に伝わるのと同じで、何かと何かがぶつかったら音が発生する、というロジックをUnityで組んで配置しました。なぜこのようなサウンドを活用したかと言うと、大学在学時に受講した「民俗音楽論」という講義の影響が大きいです。当たり前のように人々に受容され、普及している十二音階や、ハーモニー、メロディ、リズムなどの音楽の概念が実は西洋主義的で、民族音楽などの伝統的な音楽はその枠に当てはまらないと知りました。そのとき、それまで自分が聴いていた音楽は西洋中心的だったんだと気が付き、それ以外の文化圏の音楽の存在にも目を向けたいと思いました。

それからメロディやリズムを逸脱した音楽を作ろうと思い、民族音楽が身体や文化由来で生まれた音を使っているなら、自分のルーツはなんだろうと思ったときに、ゲームという空間内で音が発生する状態を使って、音楽を作ることにしました。そのような意味では、音も「存在」を表す重要な要素のひとつだと考えています。

冒頭のバナナや、JACKSON kakiさんご自身のアバターなどは、仮想空間内における何らかの存在を示唆されているようでしたが、これらについて教えてください。

仮想空間における身体についてはすごく意識しています。実は過去にも『死と物理に関して。』など同じようなテーマで色々な作品を作っていて、最終形態となるのが今回発表した作品です。ストーリー全体が自分のひとつの叙事詩のような側面を持っていて、それらは「役割からの解放」を意味しています。人の存在とは、つい社会的な役割や立場という制約で語られがちですが、本来は生きているという状態があらゆる偶発性の中から生まれて、いまここにいるという事実だけでとても美しく尊いことだと思うんです。

そうした思いから、アバターの自分が実体を持った自分をナイフで刺すというシーンが生まれました。プレイヤーとアバターにおける、「操作するもの/操作されるもの」という主従関係を解消することによって、アバターがもつ「アバターとしての役割」を解放したんです。また、アバターと私がリンクするように一緒に踊るシーンは、観客という他者から見られているパフォーマーとしての自分を示唆していて、自分自身をナイフで刺し、倒れて動かなくなるという行為を通して演者の役割から解放したんです。

MUTEK.JP / Photo: Shigeo Gomi

他にも、一般的なゲームにおいては、「敵を倒す」ということが当たり前のように目的化されていると感じるので、モンスターは「生まれた時から殺されるという役割を与えられた存在の象徴」として登場させました。

JACKSON kakiさんの表現したいメディアと身体の関係性をひとつのかたちに完成させたいま、次はどのようなことに取り組んでいきたいですか?

自分の中ではメディア芸術をある種の総合芸術のひとつとして捉えているので、さらに表現の幅を拡張していきたいと考えています。2022年度からはIAMASへの院進が決定していて、そこでは言語化する能力を高めたいです。なぜかというと、まだゲームアートをはじめメディアアートの領域における批評の視点は少なく、VRなどの最先端技術の芸術文脈における扱われ方に疑問を感じる時もあります。これまでメディア芸術がどういう風に研究されてきたのか、他の領域の研究についてもリファレンスしながら、自分が取り組んでいることを明確に言語化し、批評できるようになっていきたいです。

INFORMATION

『Imaginary Line』
渋谷のナイトクラブContact Tokyoを舞台に、コンピューター・デジタルテクノロジー誕生以降を生きる様々なアーティスト/オンラインプラットフォームが参加するグループ展がJACKSON kakiキュレーションのもと開催予定。 クラブのスペースに空白が生まれる昼間の時間に、ギャラリーとしての活用を試みる。
 
・開催期間:1月31日(月)〜2月4日(金)
・出展作家:alpha_rats、荒井優作、Hana Watanabe、小松千倫、ritsuko、浮舌大輔、羊喘兒、YUSUKE WASHIMIほか
・展覧会詳細情報:https://avyss-magazine.com/2022/01/11/32976/
・公式Instagram: https://www.instagram.com/imaginaryline2022/ 

 

CREDIT

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TEXT BY NANAMI SUDO
栃木県出身、1998年生まれ。2020年早稲田大学文化構想学部卒業後、フリーランス編集者に。主にWEBサイトやイベントのコンテンツ企画・制作・広報に携わっている。2023年よりWhatever inc.でProject Managerとしても活動中。

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