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2018.03.27

カタルーニャ独立問題の続くバルセロナで、社会をハックし続けるThe Influencersの挑戦(後編)

TEXT BY SAKI HIBINO

2011年に起った経済危機以降、政治・経済をはじめ混乱が続くスペイン。今年に入ってからは、カタルーニャの独立問題が激化し、世界中のマスメディアがその動向に注目している。そんな混沌の最中にもあるバルセロナで、開催されるフェスティバル「The Influencers」。日本からはChim↑Pomが参加した2017年、熱狂と混乱のバルセロナの様子、キュレーターの語るアート・ポストデジタル環境時代における「社会ハック」の試みをレポートする。(前編はこちら

非常に大きな何かが、福島で起こった事象の中にある

2017年、The Influencesでは、日本のアーティスト集団Chim↑Pomが指揮をとり、国内外12組のアーティストが参加した『Don't follow the wind』プロジェクトが同時開催されていた。

このプロジェクトは、高い放射線量により立ち入りが制限されている福島・東京電力福島第一原子力発電所付近帰還困難区域を舞台に、原発事故後、地元の人々が避難する前に住んでいた場所などを借りて作品が展示されている。帰還困難区域の指定が解除された時に初めて作品を見ることが可能になり、それまでは「一般にも見られない展覧会としてその場所で存在し続ける」という。

フェスティバルキュレーターのバニ・ブルサヂィンはこう語る。

「『Don't Follow the Wind』プロジェクトは素晴らしい。大災害が原因で福島が治外法権の場所になったことへの探求だけでなく、既知の概念の崩壊と、未来の科学技術に対する人間的なストーリーがそこにはある

それはまた、非常に大きな何かが、福島で起こった事象の中にあることを感じさせた。

アートにおいて、原子力の文化を扱うという考えはチェルノブイリを経験した欧州人にとっても、まったく新しいものではない。それよりももっと他の要因、そこに潜む人間的ストーリーが僕らを惹きつける。例を挙げるならば、昔、一人のアーティスト、James Acord(ジェイムズ・エイコード)に出会ったことは忘れられない経験だった。彼は彫刻を通して、人生全てを放射性物質に捧げたアウトサイダー芸術家だ。今回、Abandon Normal DevicesフィスティバルとCCCBの協力のおかげで『Don't Follow the Wind』をバルセロナに持ってくることができたのは本当に光栄だったよ」 

一方、日本のネットアートカルチャーは、ヨーロッパにも影響を与えている。

インターネット上の秘密結社IDPWにより東京から発信された、"インターネットっぽいもの"を現実世界で自由に売り買いすることができるフリーマーケット『インターネットヤミ市(The Internet Yami-Ichi) in バルセロナ』も開催。地元民とヨーロッパから駆けつけたインターネットフリークの好奇心と遊びゴコロに溢れたマーケットは東京の初期のヤミ市の空気感を思い出させるものがあった。

街に溢れる"オフライン"の市民データ

フェスティバルの開催地バルセロナにも少し触れてみたい。今、まさに世界中が動向を注目している、カタルーニャ独立問題に揺れるバルセロナ。独立の選挙に起こった警察の市民に対する暴動の写真や映像がTwitterやFacebookで拡散され、20世紀の民主主義を問う論争が巻き起こったのも記憶に新しい。

バルセロナの街を歩くと、マンションのベランダにカラフルな旗が並んでいるのを目にする。現地の人に尋ねたところ、住民が独立選挙の際にベランダにカタルーニャ、スペインの国旗が掲げ、自分たちがカタルーニャ、スペインどちらを支持しているのかを表明したのだという。写真にある”Si”の旗はカタルーニャの独立に”Yes"という意味を持つ。街を歩いていれば一目で、住民の意思がわかるシステム。エリアによってはカタルーニャとスペインの旗の割合も変わってくる。メディアやネットの情報だけに止まらない、オフラインのリアルな現実の中で可視化された市民の意思の大量データがこの街には溢れている

まさにこの街の実情自体が、アーティスト、アクティビスト、研究者にとっては、非常に興味深いサンプルであり、この街のメディアアートの新たな領域を切り拓く一つのソースになっているのだ。

アート/ポストデジタル発想で、社会の定義をハックする

最後に、バルセロナのメディアアートの現状とThe Influencersの展望についてバニに尋ねてみた。

「バルセロナの”メディアアート”のシーンは、IT系のアプリなどのサービスを中心としたビジネス、大規模のイベントやショーといった新しいメディア産業と大学や研究機関などのアカデミックな領域の2つの方向性から発展してきた。

しかし、2011年の社会不安(いわゆる15M運動)後のスペインの政治的変化は、表現、主権、および民衆の自由を含む民主主義に対して、科学技術、大量のデータ、ゲリラ的コミュニケーションおよびハッカーの文化が大きな影響を与えたことに対する認識を我々にもたらした。

最近では、公共圏上でのデータや非ニュートラルなネットワークインフラの影響を研究するアーティストや、政治的なアクティヴィスト、ハックティビスト、社会学者などのシーンといった非常に興味深い、新しい領域が育ってきている。

グローバル社会になればなるほど、非企業、非アカデミックな新しい研究形態が必要となってくるだろう。このシーンにおける芸術的かつ実験的な側面はまだまだ発展途上にあり、The Influencersとしては、今後この分野に置いて貢献したいと考えているよ」 

Chelsea's Wall Action with !Mediengruppe Bitnik at The Influencers 2015
Network as Material. A workshop by Julian Oliver at The Influencers 2014

「現代社会は、複雑な通信技術、文化・習慣、循環する想像力、および不可視の力の構造によって定義されている。 The Influencersは、これらのスタックを公開し、特にアートや、ポストデジタル的な発想を用いた新しいアプローチによって現代社会の定義がハッキングされるような試みを続けている。

機知に富んだ視点を提供するきっかけを作るには、そのまま与えられているもの享受しているだけではいけない。 2017年度から、The Influencersは、Transmedialeが主体となり、欧州全域の5つの主要芸術団体、Abandon Normal Devices、STRPThe Centre de Cultura Contemporània de Barcelonaと共にインターネット時代におけるアート、テクノロジー、政治・市民権についての協議のプラットホーム”The New Networked Normal”といったネットワークにも属しており、アート、アクティビズム、公的研究の境界に挑む取り組みをグローバルレベルで展開していこうとしているんだ」

「The Influensersは、まさに悲惨な未来に対して、私たちが予期しないエキサイティングな選択肢が見つかる場所として発展していきたいと思っているよ!」

CREDIT

Saki.hibino
TEXT BY SAKI HIBINO
ベルリン在住のエクスペリエンスデザイナー、プロジェクトマネージャー、ライター。Hasso-Plattner-Institut Design Thinking修了。デザイン・IT業界を経て、LINEにてエクペリエンスデザイナーとして勤務後、2017年に渡独。現在は、企画・ディレクション、プロジェクトマネージメント・執筆・コーディネーターなどとして、国境・領域を超え、様々なプロジェクトに携わる。愛する分野は、アート・音楽・身体表現などのカルチャー領域、デザイン、イノベーション領域。テクノロジーを掛け合わせた文化や都市形成に関心あり。プロの手相観としての顔も持つ。

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