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2020.02.15
アムステルダム発、環境変動をテーマに実験音楽で挑むオーディオビジュアル・フェスティバルSonic Acts Academy 2020
TEXT BY SAKI HIBINO
2020年2月21日から2月23日にかけ、アムステルダムで開催される実験的なオーディオビジュアルの祭典Sonic Act Academy。2020年のテーマは、緊急性をともなう気候危機がもたらすメッセージと未来へのアプローチ。世界中から参加する50組以上のアーティスト、思想家によるライブパフォーマンス、インスタレーション、レクチャー、ワークショップなど多彩なプログラムで構成される。
1994年からはじまり、アート、科学技術の領域を横断しながら、音楽表現の発展をめざす祭典「Sonic Act Festival」。その姉妹版として、2016年からスタートした「Sonic Act Academy」は、これからの時代における人間性や社会のあり方を議論し、音楽を中心とした実験と革新をともなう芸術研究に焦点を当てている。
Academy 2020では、世界中で深刻化する気候変動問題などに焦点をあて、生態学、政治、技術、社会環境、そして芸術的な視点などの変容について思考する。
会場となるStedelijk Museum Amsterdam、OT301、Paradiso、De Brakke Grondでは、世界中から革新的なアーティストや思想家が集結。3日間にわたり、ライブパフォーマンス、インスタレーション、レクチャー、ワークショップを展開する。
Paradisoで行われる、オーディオビジュアルパフォーマンスとマルチチャンネルスピーカー構成を特徴とするプログラム「Expanded Experience」。このプログラムでは、音の心理音響特性を活かし、時間・空間・身体を介して人の感覚体験の拡張を実験する。
見どころは、ベルリン在住のアーティストHolly Herndonによる没入型ライブパフォーマンス「PROTO」。さまざまなフォルムに加工したヴォーカルとアヴァンギャルドなエレクトロサウンドをかけあわせミュータント・ポップの新たな地平をひらくHolly。「PROTO」では、彼女が自身の“赤ちゃん”と称するAIとのコラボレーションに挑んでいる。
ビート・アプローチの先鋭性が高く評価され注目を浴びるAYA(fka LOFT)、Kali Maloneによる瞑想的なオルガンパフォーマンスにも期待したい。
De Brakke Grondでは、2日間にわたり、気候変動をはじめとする社会問題を扱うシンポジウムを開催。建築と地理学をとおして地球と人類の関係を探求するDESIGN EARTHの共同設立者である建築家Rania GhosnとEl Hadi Jazairy、技術哲学と政治生態学を専門とする理論家Lukáš Likavčanなどによるレクチャーが行われる。
土曜の夜を彩るParadisoでのクラブイベント「Progress Bar」。人種、宗教、セクシャリティーなど社会的アイデンティティを形成する様々な要素において、多様な価値観の共存が求められる昨今。音をつうじて固定概念を打破し、唯一無二の個性を表現する気鋭の若手アーティスト達のエナジーが炸裂する。
ナイジェリア出身、バンクーバーを拠点にする実験音楽家DEBBY FRIDAYによるパンク、ドリル、テクステップを駆使した反抗的なライブパフォーマンスをはじめ、ジャマイカ出身、NYを拠点にするDJ SHYBOIのテクノセッションも見逃せない。SHYBOIは、女性やLGBTQのアーティストやカルチャーをサポートする注目コレクティヴDiscwomanの創設者の一人としても知られている。
その他にも、中国のフォークロアとトランス、ジャングルの融合が特徴的なベルリンを拠点にするプロデューサーRUI HO、メキシコのアンダーグラウンドノイズシーン出身、レゲエトンDJ Rosa Pistolaなど注目株が名を連ねる。
今、最もエキサイティングなアーティストや思想家とともに、実験的な芸術表現をとおし、人類と未来社会を考える刺激的な3日間となるだろう。
フェスティバルの全プログラムは、Sonic Act Academyのオフィシャルサイトでチェックできる。
INFORMATION
Sonic Act Academy 2020
会期:2020年2月21日 〜 2月23日
会場:Stedelijk Museum Amsterdam、OT301、Paradiso、De Brakke Grond、ほか
入場料:フェスティバルパス/70ユーロ
(その他デイパス、プログラムごとのチケットあり)
URL : https://2020.sonicacts.com/
Line-up / Anthea Caddy, Daniel Mann + Eitan Efrat, Elvin Brandhi, Hugo Esquinca + Yuk Hui, Jonáš Gruska, Kali Malone, Maika Garnica, Marja Ahti, MÆKUR: Anton Kats + Maia Urstad + Eva Rowson, Nabil Ahmed, Philip Vermeulen, Roly Porter + MFO, SADAF, Speaker Music (De Forrest Brown, Jr.), T. J. Demos, Terike Haapoja, Holly Herndon, AYA, bod [包家巷] + Schwestern Sisters (SwS), Bookworms, Debby Friday, Design Earth, Marjolijn Dijkman, Anja Kanngieser, Lag OS, Lukáš Likavčan, Meuko Meuko, Rui Ho, S280F / 011668 / vvxxii, Tadleeh, Via App, Ale Hop, Aliyah Hussain + Anna Bunting-Branch, Arie Altena + Katía Truijen, Ben Russell, Cõvco, Dehlia Hannah, DJ Serene, djb, Duncan Speakman, Elaine Gan, Ex Continent, Felicity Mangan, Go Me + Ity, Hatechild., Heleen Blanken + Karl Klomp, KJDENNNM, LOKA, Lone Taxidermist, Malibu + Judith Hamann, Nadim Samman, NO BRA, Rosa Pistola, Shyboi, SITOI, Tomoko Sauvage, Underground Division: Helen Pritchard + Jara Rocha, Vincent Meessen, xin, Zohar
CREDIT
- TEXT BY SAKI HIBINO
- ベルリン在住のエクスペリエンスデザイナー、プロジェクトマネージャー、ライター。Hasso-Plattner-Institut Design Thinking修了。デザイン・IT業界を経て、LINEにてエクペリエンスデザイナーとして勤務後、2017年に渡独。現在は、企画・ディレクション、プロジェクトマネージメント・執筆・コーディネーターなどとして、国境・領域を超え、様々なプロジェクトに携わる。愛する分野は、アート・音楽・身体表現などのカルチャー領域、デザイン、イノベーション領域。テクノロジーを掛け合わせた文化や都市形成に関心あり。プロの手相観としての顔も持つ。