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2020.09.07

今年はオンラインで同時期開催! アルスエレクトロニカ2020&MUTEK Montréalの見どころ

TEXT BY NANAMI SUDO

2020年9月8日から13日までの6日間、2つの大規模なオンライン・フェスティバルが開催される。今年アルスエレクトロニカは、例年のリンツ会場だけでなく世界各都市の会場をオンラインでつなぐ。またMutek Montrealもオンラインでパフォーマンスやカンファレンスを披露。ヴァーチャルで鑑賞可能な展示から、テクノロジーと私たちの未来を取り巻く様々な課題や展望が議論されるフォーラム、電子音楽のパフォーマンスまで、世界のアートサイエンス・シーンが自宅で楽しめる。

史上初の世界120都市開催、アルスエレクトロニカ 

アートとテクノロジー、そして社会のためのフェスティバル・アルスエレクトロニカ2020は、新型コロナウイルスの影響で初となるオンライン開催を決定した。地動説に大きく貢献したことで知られる、天文学者のヨハネス・ケプラーに触発されたオーストリア・リンツにあるKepler’s Gardenから、世界各国の都市がオンラインで繋がる。テクノロジーを環境破壊や政治的抑圧ではなく、人間の未来のために舵を切るにはどうすれば良いのか。世界各都市全120ヶ所のヴァーチャルな”庭”を旅しながら、その問いについて考えることができるだろう。

Kepler’s Garden
《Dancing Water》Leon Kainz (AT)

現地・オーストリアのアーティストLeon Kainzのインスタレーション《Dancing Water》は、静電気の発生原理に基づいて、来場者が近づくことによって帯電した水滴がダイナミックに渦を巻き、花のように軌跡を描く。シンプルな構造ながらも、静電気という媒介を通してダンスでこちらにレスポンスする水の様子は、今回の開催形式を彷彿とさせる。

《Value of Value (VoV)》Maurice Benayoun (FR/HK)

香港からは、ブロックチェーンをベースにしたアートプロジェクト《Value of Value》が出展。参加者の脳波からデザインされるデジタル3Dモデリングは、与えられたナンバーでブロックチェーンに登録され、構築されている。

《Terminal Slam》Manabe Daito

そして、日本の「Tokyo Garden」は、ライゾマティクスの齋藤精一がプログラムディレクターを務める。インターネットを用いたフェスティバルのメリットとは何か、この不遇とも言える機会をどう活用するかを模索しながら、日本のメディアアートの原点を辿れる場となっている。

ヴォイス・プレイヤーの細井美裕は、ICCの無響室で22.2チャンネルサラウンドの楽曲《Lenna》をライブで披露する。他にも、ドミニク・チェンらの《Last Words / Type Trace》や真鍋大度が監督したスクエアプッシャーのMV《Terminal Slam》の舞台裏などがオンラインエキシビションで公開される。また、長谷川愛らが「日本のメディアアートの歴史を振り返る」トークや、市原えつ子らが「メディアアートの役割」に迫るトークなどが配信予定。

MUTEK Montréal が送るフォーラム&エキシビション

また、アルスエレクトロニカ2020と同期間に、電子音楽とデジタルアートの祭典MUTEK Montréalも開催される。こちらは今年21回目にして初のオンラインと現場を掛け合わせたハイブリッド形式で行われる。このフェスティバルは、AIなどの技術発展に伴うプライバシーのリスクや芸術の実践などについてディスカッションされる「MUTEK Forum」と、ヴァーチャルエキシビションの「Distant Arcades」、アーティストパフォーマンスの3つの要素で構成され、いずれもオンラインで参加が可能だ。

 

よりリズミカルで魅力的な電子音楽を味わえるSatosphèreの没入型360°の空間演出などが見どころのアーティストパフォーマンスは、メイン会場となるカナダ・モントリオールのPlace des Artsから19組のワールドプレミア公演をライブ中継するだけでなく、アルゼンチン、フランス、イタリア、日本、メキシコ、韓国、スペイン、アメリカの8ヶ国から、24組のパフォーマンスも届けられる。

Ai Step

日本からは4組のアーティストが参加。MUTEK.JP 2019で披露された、エレクトロニックミュージックプロデューサーSakura Tsurutaと、ARアーティストのasagiによるオーディオヴィジュアルコラボレーションがモントリオールにて再び実現。また、オーディオビジュアルユニットAi.stepや、同じくオーディオビジュアルアーティストのJunichi Akagawa、振付家でありマルチアーティストのHiroaki Umedaが名を連ねる。

Hiroaki Umeda

今回のフェスティバルの多様性は、「MUTEK_CONNECT」というイニシアチブの下実現している。各地の芸術コミュニティから新進気鋭の才能が後押しされ、各都市がフェスティバル内で互いに関係を築ける機会を設けることで、それぞれの芸術コミュニティの認知度を高めることを目的としている。オンライン上の邂逅がどのような化学反応を生むのか、楽しみにしたい。

展覧会情報

ARS ELECTRONICA 2020

会期:2020年9月8日(火)〜2020年9月13日(日)
会場:Kepler’s Garden他 オンライン
参加料:無料

https://ars.electronica.art/keplersgardens/en/

 

MUTEK Montreal

会期:2020年9月8日(火)〜2020年9月13日(日)
会場:Place des Arts他 オンライン
参加料:無料

https://montreal.mutek.org/

 

CREDIT

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TEXT BY NANAMI SUDO
栃木県出身、1998年生まれ。2020年早稲田大学文化構想学部卒業後、フリーランス編集者に。主にWEBサイトやイベントのコンテンツ企画・制作・広報に携わっている。2023年よりWhatever inc.でProject Managerとしても活動中。

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